「どうしたの?」

「ミルクティー、忘れてた」

「ミルクティー?」


先輩に手を握られた時にびっくりして落としたミルクティーの缶、確か床に転がっていたはずだが、拾ってくるのをすっかり忘れていた。


「買ってもらったやつ……置いて来ちゃった。あの、図書室の前のところに」


“買ってもらった”というところに、若菜が目聡く反応を示す。


「眞由、ミルクティー飲みたいの?」

「その時はね、飲みたい気分だった。どうしよう……今から取りに行ってもいいかな?」


まだあの場所で、先輩は悲嘆に暮れているのだろうか。だとしたら、顔を合わせるのはちょっぴり気まずい。
なにせ、奥野は先輩を慰めに戻るのではなく、忘れていたミルクティーを取りに来ただけなのだから。


「わかった、新しいの買いに行こう。おれが買ってあげる」

「え?でも、貰ったやつが……」

「それはなかったことにして」