「……景くんがそんな意地の悪い人だとは思わなかった」

「眞由が可愛いのが悪い。イタズラしたくなる」


普段はそんなこと言わないし、そんな悪戯っ子みたいに笑ったりしないのに、どうやら秘めたものがあったのは、奥野だけではなかったらしい。
気だるげな仕草と垂れ目から放たれる色気に、今は妖艶さが加わって、いつもよりドキドキしてしまう。

ここは学校なのだと、忘れてしまいそうになるくらい。


「帰ろう、眞由。今日はカレーがいい」

「カレー?……あれ、今日もおばさんいないの?」

「いるけど、父さんが帰ってくるから夜は外で食べるって」

「……それは、景くんも行くべきでは?」

「眞由のご飯の方がいい」


そう言って立ち上がった若菜に、繋いだままだった手を引き上げられる。
せっかくの家族団らんなのに、と思いながら苦笑した奥野は、そこではっとする。