しばしそうして見つめ合いながら、奥野はもう一度頭の中に若菜の言葉を反芻した。

――勘違いじゃないから、別にいい。

勘違いじゃない……、それだとまるで……――。


「ど、どういうこと!?」

「……なにが?」


混乱する奥野に、若菜はわけがわからなそうに首を傾げる。


「そ、その、だって……か、勘違いじゃないって、そ、そんなのまるで……!」


その先は、口には出せなかった。流石に長年秘めてきたものは、混乱の最中でもぽろっと出てきたりはしない。
ぱくぱくと口を動かしてうろたえる奥野に、若菜は首を傾げたままで言った。


「そんなのまるでなに?よくわからないけど、何も勘違いされることなんてないよ。おれは眞由のことが好きだから、眞由だけいればいいし、眞由がいてくれるならそれ以外は何もいらないんだから」


さらりと放たれた“好き”という言葉に危うく胸が高鳴りかけたが、違うそうじゃない、そういう好きじゃない!と強く言い聞かせて静める。