「ごめん、丁度取り込んでたから確認出来なくて」

「……いつもはすぐ返事くれるのに、見てもなかったから何かあったのかと思って捜した」


それでフリースペースに現れた若菜は、息を切らせていたのかと奥野は納得する。


「学校で早々何か起きることもないと思うけど」

「起きてたじゃん」


そう言って若菜は、また眉間にきゅっと皺を寄せる。初めは怒っているのかと思ったが、段々と泣きそうなのを我慢しているようにも見えてきた。


「あいつ、眞由の手握ってた。眞由は、おれのなのに……」


奥野の手を握ったままだった若菜の手に、またぎゅっと力がこもる。そのせいで、奥野の心臓がまたどくんと高鳴った。

わかっている。若菜のそれは、“おれの幼馴染みなのに”とか、自分が一番仲良しのはずなのに、といった意味合いであってそれ以上ではない。
わかっているのに、心臓が煩い。こちらの言うことも聞かずに、ドキドキと高鳴っている。