「……何してたの」

「え？」


俯いてぼそっと言うから、何と言ったのか聞き取れずに奥野は訊き返す。
奥野の方を向いた若菜は、とても不機嫌そうな顔をしていた。


「あいつと、何してたの」

「頼まれ事を……ちょっと」


景くんのことで……と小声で付け足すと、「おれのこと？」と顔と同様不機嫌な声が返ってくる。
先ほど先輩に向けていた怒気のこもった声とは違うが、いつにも増して不機嫌そうな声ではあった。


「その……景くんと一緒に遊びたいってクラスの女子が言ってるって、だから来てくれるように頼んでくれないかって」


話を聞いた若菜の眉間に、きゅっと皺が寄る。


「その話をしてて、おれが送ったメッセージ見てなかったの」


え、と零して、奥野はポケットからスマートフォンを取り出す。メッセージを受信したのはバイブでわかっていたのだが、確認する暇がなかった。
画面には、「今どこ？」という若菜からのメッセージが届いている。