女子の先輩方が、顔を寄せ合って何やらひそひそやり始めているのが見えて、奥野は恥ずかしさで顔に熱が集まっていく。

すみません僕には無理です!と叫んで逃げ出したいのに、両手で掴まれた手は全然抜けなくて、逃げるに逃げられない。
どうすればこの人は落ち着いてくれるのか、どうしたら手を放してもらえるのか、どうすれば、どうしたら……と奥野がパニックに陥っていると


「眞由!!」


後ろから息切れまじりに名前を呼ばれて、その声に反応した奥野が振り返る前に腕を掴まれ、ぐいっと強い力で体を引き寄せられた。

大きな声に反応して顔を上げた先輩は、その瞬間力が弱まっていたのだろう、さきほどまで全く抜けなかった手が、引き寄せられる勢いでするりと抜ける。
引き寄せられた勢いでよろっと椅子から立ち上がった奥野の体が、背後にあるものにどんっとぶつかって止まる。

斜め上を見れば、自分より頭一つ分は高い位置にある顔。触れている背中からは、どくどくと激しい鼓動が伝わってきた。