膝の上のミルクティーに視線を落としながら、奥野は答える。
冷たいミルクティーは、夏の盛りにはその缶の冷たさが心地いいけれど、今はそうでもなくて、ただただ体温を奪われる感覚しかない。
やっぱりホットが正解だったのだろうか。咄嗟に目に入ったのがアイスの方だったから、慌ててアイスを選んでしまったのだよな……などと現実逃避気味に違うことを考えていたら、ズボンのポケットでスマートフォンが震えた。


「そこを何とか!眞由くんにしか頼めないんだよ。この通り!!」


ポケットに伸ばしかけた手が、がばっと勢いよく先輩が頭を下げたことで止まる。
危うくテーブルに打ち付けそうなくらいの勢いで下げられた頭に、奥野は困惑する。


「いや、あの、先輩、その……と、とりあえず頭上げてください」


“この通り!!”なんて大声で言って頭を下げるものだから、別のテーブルを使っていた女子の先輩方が驚いたようにこちらを見る。
そのテーブルに丁度背を向けるように座っている先輩は気付いていないのだろうが、そのテーブルが真正面に見える形で座っている奥野には大変気まずい。