「もちろん一年生だって自由に使っていいはずなんだけど、なんかねー、使いづらいよね。わかるわかる」


うんうんと頷く先輩に連れられ、奥野は初めてのフリースペースへ。
いつ前を通っても人で埋まっている印象があったが、今日はとても空いていた。女子の先輩方が一つテーブルを使っている他に利用者はいない。


「今週から部活動強化期間に入ったから、空いてると思ったんだよね」


そう言って先輩は、一番手前のテーブルへ向かう。奥野もそれに続き、先輩の向かい側の椅子を引いて腰を下ろした。
買ってもらったミルクティーは、なんとなく開けるタイミングがわからなくて、膝の上に置いた両手でいじいじと触る。


「さて眞由くん、キミにお願いしたいことなんだけれども」

「あ、はい」


先日初めて会った先輩からのお願いとは、一体なんだろう。なんとなく、若菜に関係することなのだろうなと予想はしているけれど。
先輩は真面目な顔をして、テーブルに腕をついてぐっと身を乗り出す。