「こんにちは。いいところで会った!眞由くんにお願いがあってさ、探しに行こうと思ってたところだったんだ」

「お願い……ですか?」


笑顔で頷いた先輩は、「え、なにジュース買うの?いいよ、いいよ俺が奢るよ!何がいい?」と半ば強引に自動販売機に小銭を投入してしまう。


「えっとその……じゃあ、アイスのミルクティーを」


先輩がボタンを押すと、がこんと重たい音がして取り出し口に缶が転がってくる。屈みこんでそれを取り出した先輩に、「はいどうぞ」と差し出され、奥野は恐縮しながら「……ありがとうございます」と受け取った。


「ここじゃあれだし、図書室前のとこ行かない?」

「あそこ、使ったことないです。いつも先輩方がいっぱいいるので」

「確かに、一年生じゃ使いづらいかもね。俺も使うようになったの二年に上がってからだし」


先輩について奥野が向かったのは、自動販売機と同じ一階にある図書室の前、テーブルと椅子が数組置かれたフリースペース。
勉強してもよし、昼休みにはそこでお昼を食べてもよしというスペースで、たまに図書室を利用する奥野も気になってはいたのだが、二年生や三年生ばかりの中に乗り込んでいく勇気がなくて利用したことはなかった。