自分で言うのは悲しいので濁しておいたが、正直放課後に一緒に遊ぶような友人が高校では作れていない。
クラスメイトは挨拶をすれば当たり前に返してくれるし、席の近いクラスメイトとはたまに話もしたりする。けれど、それだけだ。
こちらから誘えば乗ってくれるのかもしれないが、そうまでして遊ぼうとも思わないから、奥野は現状友達と呼べる人がいない。


「でも、たまには友達付き合いだって大事にしないと。せっかく誘ってくれてるんだし」


ちらっと話しただけだったが、中々楽しそうな人達だった。


「あいつらと遊ぶより、眞由と一緒にいる方がいい」


それよりお腹減った……と力なく訴える若菜に、奥野は苦笑しながら調理を始める。
うっかり期待してしまいそうになる言葉だが、そんなはずはないのだと奥野は自身に言い聞かせる。
ただ単に若菜は、友達といるより幼馴染みといた方が気が楽だという意味で言っているだけであって、それ以上の意味なんてないのだ。


「眞由は、おれよりクラスの奴らといる方がいい?」


野菜を切る手を止めて、奥野は顔を上げる。
キッチンから見えるリビングのテーブル、そこに先ほどまで突っ伏していた若菜が、テーブルの上で組んだ腕に顎を乗せて、奥野を見ていた。