「眞由……お腹減った」

「すぐ作るからちょっと待って。ていうか景くん、皺になっちゃうから制服着替えて来た方がいいんじゃない?」

「もう一歩も動けない……」


リビングの椅子に座って力なくテーブルに突っ伏している若菜の姿を、奥野は苦笑気味に眺める。

放課後にいつも通り教室まで迎えにやって来た若菜と帰ろうとしたところで、若菜の友人だという人達に捕まった。
どうやら放課後の遊びのお誘いだったらしく、二年に上がってからちっとも付き合ってくれなくなった!という友人達の訴えを聞いているうちに、すっかり帰るのが遅くなってしまったのだ。

何でも、遊びに誘っても「眞由が」「眞由と」と言って断られるとかで、それなら眞由くんも一緒に行こう!と誘われ、「ダメだよ眞由は」と若菜が友人達を睨み付ける一幕もあったりして、色々とまあ大変だった。
これがきっかけで、若菜と彼等の友情にヒビが入らないことを願うばかり。


「景くん、たまには友達と遊びに行ったら?あの感じだと、僕が高校入ってから遊びに行ってないんでしょ」

「眞由だって遊びに行かないじゃん」

「それは……まあ」