「焼きそばじゃなくて焼きうどんでいいの?」


中華麺もあったはずだと思いながら問いかけると、若菜がこくりと頷いた。


「今日は焼きうどんの気分」


そっか、わかった。と返事をすると、若菜が嬉しそうに笑ってまた頷いた。
普段仕草のみならず表情も気だるげなことが多い若菜だが、笑うと元々の垂れ目が更にふにゃりと垂れて、一気に愛らしくなる。
こんな笑顔を高確率で見られるのは、そばにいることの多い自分の特権だと、誰にともなく奥野は得意げな気持ちになる。


「帰り、アイス買って行こう」

「アイス?前に買ったファミリーパックのがまだ冷凍庫にあるけど」

「別のが食べたい」

「ダメ、ある物から食べて。じゃないと冷凍庫いっぱいになっちゃうでしょ」


若菜が、むーっと子供みたいにむくれる。時折どちらが年上かわからなくなる奥野だが、そんな若菜も愛おしい。


「あ、景くん、口のとこマヨネーズついてる」


ちょっと待って、と奥野はブレザーのポケットからティッシュを取り出す。その拍子に、先ほどクラスメイトから貰った飴がぽろりと転がり落ちた。