私たち三姉妹は、誰も実家がある長野にとどまることなく揃いも揃って都内で暮らしている。
 長女のあやめ姉さんは、銀行員のお義兄さんと結婚して専業主婦。
 次女の私は、都内の大学卒業後、学生時代からアルバイトをしていたイベント会社にそのまま就職。
 末っ子の桜子は、美容師の専門学校に通うために東京に出てきたはずなのに、気が付いたら学校を辞めて、ネイルサロンで働いていた。
 でもそれをすぐに辞めて、ペットショップ、本屋、カフェ店員とすごろくのコマを進めるみたいにコロコロ仕事を変えていって、今は彼氏と一緒に亀戸駅の近くでおにぎりをやっている。
 もし私がそんな落ち着きのない人生を送ったら、お姉ちゃんもお母さんも、絶対に怒る。それなのに桜子の場合なにをやっても、『桜子だから』という諦めモードーが流れて見守る姿勢を取る。
 ズルい。
 二年ちょっと前に父が亡くなった際、遺品整理をしていて桜子名義の通帳を見付けた。父は桜子の将来を心配して、コツコツお金を貯めていたらしい。
 母も姉も、末娘の父の愛に涙ぐんでいたけど、正直私は、その時もなんとなくズルイと思った。
 でも私が今、三姉妹の真ん中が不幸だと思っている理由はそんなことじゃない。