【わたしの家族】という課題の作文。そんな文章で始まった私の作文は、原稿用紙五枚分の姉妹への恨み言を綴る大作となった。
 それを読んだ先生が、赤ペンで丸や花丸うつける代わりに『かんばっってね』と応援のコメントをくれたのは、先生も三姉妹の真ん中だったからなのかもしれない。聞いてないけど。
「三姉妹の真ん中って、不幸だよね」
 昼休み、私・音羽杏は職場の休憩スペースデで唸る。
 そして小さな丸いおにぎりを口の中に放り込む。
 刻んだカリカリ梅と、刻んだ青物の漬物が、口の中でシャキシャキ小気味いい音を立てて咀嚼されていく。都内で恋人と一緒におにぎり屋さんを営む妹の桜子考案の『和歌山おにぎり』だ。
 梅は言わずもがな、和歌山県の特産品だし、一緒に混ぜられている緑の漬物も、和歌山県の特産品の『めはり』という品らしい。
「なによ突然」
 一緒にランチを食べていた同僚の相川(あいかわ) 柚子(ゆず)さんが言う。
 相川さんからすれば、唐突な発言に聞こえるかもしれないけど、私の中ではちゃんと道筋が立った話なのだ。
「さっき、有休申請をしてきたんだけど、それって、私が次女だからなのよ」
「はあ……」
 相川さんは、とりあえず相づちをうってくれるけど、顔には『なんだそれ?』て、書いてある。
 その気持ちはよくわかる。
 私は次のおにぎりをつまみ上げて、昨日の出来事を思い出す。