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 次に目が覚めたときには、僕は明るい場所にいた。
 正面に真っ白な天井が見えて、消毒液のようなにおいがする。

「あ。やっと起きました?」

 すぐ近くから聞こえたのは、女の子の声。
 ぼんやりとしたまま視線だけを動かしてみると、そこに見えたのは、おさげ髪に赤縁眼鏡の少女だった。

「玉木……?」

 相変わらずの仏頂面でこちらを見下ろしているのは、玉木和泉だった。
 僕はどうやらベッドに寝かされているようで、辺りを見渡してみれば、そこが病院らしき場所であることがわかった。

「あの廃神社で倒れてたんですよ。覚えてます? かなりの熱があったので救急車を呼びましたけど、普通の風邪みたいですね」

 淡々と述べられる彼女の言葉で、僕は現状を把握した。
 どうやら僕は風邪をこじらせて意識を失っていたらしい。そしてそれを発見した玉木が救急車を呼んでくれて、病院(ここ)に運び込まれたそうだ。

「まだご両親は来てませんけど、連絡はついてるようです。じきに到着するでしょうね」

 言われて、自分が何人もの人物に迷惑をかけてしまったことを自覚する。

「ごめん、玉木。迷惑をかけたみたいで……」

 そこまで言いかけたとき、急に激しく咳が出た。ひどい頭痛がして、思わず顔を顰める。

「無理に喋らないでください。ただの風邪とはいえ、倒れるくらいの高熱だったんですから」

「いや、これくらい大丈夫……」

 言いながら、僕はゆっくりと上半身を起こした。服は看護師さんたちが着替えさせてくれたのか、甚平のような青い病衣に変わっている。

「それより、キミはどうして僕のことを見つけられたんだ? あんな雨の中で、あんな場所に用事なんてなかったんじゃないの?」

 僕は確か、学校を飛び出して、あの神社へと向かったはずだった。雨の中を走って辿り着いたあの境内には、誰もいなかったはずだ。

「教室の窓からあなたの姿が見えたんですよ。ホームルームの途中で、あの土砂降りの雨の中を走っていく様子を見て、これはただ事じゃないと思ったんです。もしかしたら、あの廃神社のことで何かあったんじゃないかと思って」

「それで、追ってきてくれたってこと?」

 こくりと頷く玉木。その表情は相変わらずだったが、どうやら僕のことを心配してくれていたようだ。

「……ありがとう。まさか、そこまでしてくれるなんて」

「一体何があったんですか? あんな雨の中、こんな状態で飛び出していったなんて普通じゃないですよね。もしかして、また誰か神隠しに遭ったんですか?」

 聞かれた瞬間、鏡宮のことを思い出す。
 昨日まで僕の隣で笑っていた彼女は、今はもうどこにもいないのだ。
 そして、彼女のことはもう誰も覚えていない。おそらくは玉木も、鏡宮のことは忘れてしまっているだろう。

「……大事な人が、神隠しに遭ったんだ。昨日までずっと一緒だったのに。僕がずっとそばにいたのに、守ってあげられなかった」