今日の休憩時間の時、移動授業のため体育館の前を通ると望月くんのクラスは体育らしく、早めに来て遊んでいるのを見つけた。以前に海で出会った男性二人と、屋詰さんを交えて。その顔は青春を謳歌している、いつもの彼。
 私は羨望の眼差しで、それから安心感で眺めてしまう。
 二学期が始まると学校で彼を見掛ける回数は増えていった。いや、私が以前よりも彼を見つけてしまっているのかもしれない。
 学期が始まってからの彼は、どこにいても、翳りを帯びているような気がして探してしまっていた。本当はそんなことないのかもしれない。私が気にしているからそう見えるだけだと思いたい。
 それでもどうしても気になってしまっていたが、客観的に、離れて見ると私とは違う世界で生きる明るくて人気者、接点がなかったら絶対関わらない人に変わりなくて、私は陰ながら安堵のため息を吐いていた。
 それでよほど楽しかったのか、バスケットボールを夢の中でもしている訳だが、疲れはないはずのに「疲れたあ」と休憩をねだってしまった。彼は笑いながらボールを抱えて私の横に腰掛けた。
「修学旅行、どこ行くの?」
「沖縄だよ」
「また青い空、青い海かあ。いや、沖縄の海の方が綺麗か」
 海で遊んだ日のことを思い出すが、その時よりもより綺麗な海でより楽しむ望月くんを想像する。修学旅行なんてまさに歩く青春が輝く時だろう。
「星村も同じ学年だったらよかったのにな」
「いやあ、歩く青春と同学年なんてより私の暗さが際立つよ」
「歩く青春?」
「こっちの話」
 そういえば望月くんには言ったことなかった。別に言ってもいいのだがつい隠してしまう。危ない危ない。