「大丈夫? その、彼女さんと……」
「うん、大丈夫。明日の俺が頑張ってくれる」
 声音だけでは、彼の表情が読み取れない。相変わらず笑みを浮かべている顔。そうだね、と返してみた。
「だから今日は……今だけは、このままで」
 祈りのようなその言葉に、私は星空を見上げ、両手を合わせて願った。ただただ、彼の横で平和を願い続けた。
 二学期が始まり、九月も終わり頃になると話題は文化祭の件で持ち切りだった。例に漏れず、私のクラスも初めての文化祭で浮き足立っている。その前に二年生は修学旅行なのだが。
 夜、いつものように夢の中で私たちは顔を合わせていた。
 いつもと少し違うのは、お互い体操服を着て、体育館にいること。望月くんの手はバスケットボールを叩いていて、私は彼からボールを奪おうと手を出すがかわされる。
 キュッキュッと床を鳴らす音が私たちの後を追う。シュートを決めようとするその身体の前に躍り出ると大きくジャンプしてみせたが、呆気なくシュートを決められた。
「はあ……ああ、悔しい」
 タイミングを完全に図られた。敗因は焦ってジャンプしたから。……だと思うが、余裕そうに笑う彼を見て、それだけじゃないと窺える。
「星村もわりとやるんだな」
「よく言う……。ぼろ負けだよ」
 軽快な笑い声を上げて、またシュートを繰り出す。何でそんなにぽんぽん入るんだ。私の時は全然なのに。跳ねるボールをつい睨みつけた。