夕日が遠くの方で落ちようとしている。赤い空が秋を想像させ、昼間の鋭利とも言える暑さとは違った、緩い温もりに、夏休みの終わりを感じる。
「明日学校だね」
蒼菜の言葉に頷く。気持ちが乱れた夏休みに思いを馳せ、二学期の新たな予感にわくわくした。
その日の夜、私と望月くんは海にいた。昼間とは違って、星々が瞬く夜空が広がっている。ザザン、と音を立てて打ち寄せる海を前に、私たちは体育座りで眺めていた。
「楽しかったな」
望月くんがぽつりと言う。まるでロボットのような、抑揚のない声。疲れたのだろう。
「楽しかったね。……実を言うとさ、蒼菜と海へ行くなんて……ううん、どこかへ行くなんて、久しぶりだったんだ」
「そうなんだ?」
「うん。私は……蒼菜に対してコンプレックスを感じてて、それが解消された訳じゃないんだけど、少し分かり合えたの。あの子がそのままでいていいって許してくれたから」
「へえ……凄いな」
静かな声だった。さざめく海の音も相まって、歌のような軽やかさに心地良さを覚える。この静けさに身を委ねてみたくなった。
視界に広がる海。水色に輝いているのは、月の光を乗せているからだけじゃないだろう。この夢の中では何もかもが綺麗に映る。ここで住んでしまいたくなるくらいに。
「明日から二学期か」
静かな声が海の音に乗せられて届けられる。彼の顔を覗き込んでみた。海の光に照らされた顔は笑っているように見えたが、暗くて細かいところまではよく見えない。
「明日学校だね」
蒼菜の言葉に頷く。気持ちが乱れた夏休みに思いを馳せ、二学期の新たな予感にわくわくした。
その日の夜、私と望月くんは海にいた。昼間とは違って、星々が瞬く夜空が広がっている。ザザン、と音を立てて打ち寄せる海を前に、私たちは体育座りで眺めていた。
「楽しかったな」
望月くんがぽつりと言う。まるでロボットのような、抑揚のない声。疲れたのだろう。
「楽しかったね。……実を言うとさ、蒼菜と海へ行くなんて……ううん、どこかへ行くなんて、久しぶりだったんだ」
「そうなんだ?」
「うん。私は……蒼菜に対してコンプレックスを感じてて、それが解消された訳じゃないんだけど、少し分かり合えたの。あの子がそのままでいていいって許してくれたから」
「へえ……凄いな」
静かな声だった。さざめく海の音も相まって、歌のような軽やかさに心地良さを覚える。この静けさに身を委ねてみたくなった。
視界に広がる海。水色に輝いているのは、月の光を乗せているからだけじゃないだろう。この夢の中では何もかもが綺麗に映る。ここで住んでしまいたくなるくらいに。
「明日から二学期か」
静かな声が海の音に乗せられて届けられる。彼の顔を覗き込んでみた。海の光に照らされた顔は笑っているように見えたが、暗くて細かいところまではよく見えない。