戻ってきた三人から、私たちの分の飲み物も買ってきたと手渡される。行く前よりも親しくなっているように見えた。三人は連絡先交換をし、食べ終えると海へ駆け出した。
 結局私は十個のおにぎりを平らげ、望月くんに驚かれた。好きなのだから仕方ない。立ち上がって彼の手を取ると引っ張って立たせ、腰に浮き輪を装着した。
「へえ、星村泳げないんだ」
「悪い? そういう望月くんは泳げるの?」
「まあ運動全般得意で通ってるから」
 ふふんと鼻を鳴らす彼を置いて駆け出す。あ、待てよ、という声と共に追いかけてきて、二人で海へ飛び込んだ。
 水しぶきが舞う。さっきよりも強い光を放って、高く、望月くんの周りでキラキラと輝く。青い空、青い海にいる望月くんは綺麗で、あれ、青春してしまってるかも、と思ったがもう遅い。
 楽しい。楽しさの中では確かに好きとか嫌いとか、青春とか、悩みとか、どうでも良くなる。蒼菜の言っていたことがよく分かる。私たちははしゃいで、笑って、最後の夏休みを謳歌した。
 夕方頃に望月くんたちと別れ、私たちも帰路につく。腕に絡まってきた蒼菜を振りほどこうとしたが強い力で締め付けられ、諦めた。
「暑い」
 一応抗議するが無視して「楽しかったね」と返される。
「蒼菜に年上の彼氏が出来ちゃうのも時間の問題かも?」
「あ、そ。よかったじゃん」
「お姉ちゃんは一声くん狙い?」
「そんなわけないでしょ」
 彼女の額を小突く。ぶう、と唇を尖らせている顔がおかしくて笑う。