「なーんてな。仕返し」
「し、仕返し?」
「何か気に食わないみたいだったから?」
「別に……望月くんが、ナンパしてようがどうでもいいし」
 そっぽを向いて、安心して笑ってしまう。同じように彼も笑ってくれ、知っている空気が流れる。よかった、いつもの望月くんだ。
「それより、今日は屋詰さんいないんだね」
「ああ、タロちんは本命の子が出来たから」
「ふうん?」
 浮かんだのは花乃子の顔。もしかしたら二人とも本当にそうなっているのかもしれない。勝手な妄想しないで、と頭の中の花乃子が制してくる。つい笑みを零すと「それよりそれより、妹いたんだね」と一度流した話題を蒸し返された。
「まあ……似てないでしょ、素直で可愛い子なんだよ」
 ちょっと拗らせているみたいだが。こっそり苦笑いが出てしまった。
「いや、そっくりだよ。星村によく似て可愛い。水着も、よく似合ってる」
「またまた。そんなおべんちゃら……何も出ないよ」
「ええ、本当だって、じゃなきゃナンパされないでしょ」
「軽そうな女の子に声かけるって聞いたことあるんだけど」
 呆れたように返してみたが、胸中が騒がしくなった。ちぇ、と唇を尖らせる望月くんを見て、落ち着け、と自分を制す。今のは冗談だ。