意図せず望月くんと関わることになった。花火大会の日、現実で関わるのはあれを最後にしようと誓ったのに。しかし、これは不可抗力と言える。
 当たり前だが上半身裸の望月くんを見るのは初めて。わりと筋肉質なのか、胸板は厚く、それなりに焼けた肌が太陽光で勇ましく光る。海パンはシンプルなブルーのグラデーション。よく似合っていた。
 ここへ来る途中、自己紹介をみんなしたが、望月くんとも当然素知らぬ顔でお互い挨拶をした。彼は役者らしい、本当に少しも知らない顔で自己紹介をしてのけた。
「今日はナンパをしに来たんだけど、まさか逆ナンされるなんてね」
 金髪くんがへらへら笑いながら言った言葉につい望月くんに視線を走らせた。やはり素知らぬ顔をしている。
「でも結構されるんじゃないですか? お兄さんたち本当にかっこいいから」
 蒼菜のおだてに、まあ、と高らかに声を上げて照れ、望月くんの肩に手を回した。
「特に今日は一声がいるからさあ、よりどりみどり! な、一声」
「おうよ! この海の女ぜーんいん俺たちのもんよっ」
「お前がいたらマジでそうだわ! いやあ、一声誘ってよかったっ」
 いつものお調子者を出しているが、顔が引きつっていることに気付く。誰も気付いていないのか、望月くんをおだてて持ち上げている。
 それに、何か違和感を覚える。三人を観察しながらおにぎりに手を伸ばすと「お姉ちゃん、蒼菜たちのおにぎり食べ尽くすつもり?」と制され、笑い声が起きた。一人二個として買ったおにぎりに気付いたら手を伸ばしていた。
「いいよ、俺の食べな。歩咲ちゃん?」
 望月くんがにこやかに差し出してくれたが、いつもとは違う呼び方に寒気というか、虫唾が走り、つい目を細めた。