私は駄目人間だ。結局、自分のことしか考えられない。あんなことを思い出したのが悪い。望月くんに出会う前日の、人生最悪の日……。
 ふらふらと帰路に着き、家に着くと自室のベッドに制服のまま身体を預けた。うつ伏せで枕に顔を伏せ、目を瞑る。早く夜になって欲しい。
 しばらくして蒼菜の帰ってきた足音が聞こえる。隣の部屋の扉が開かれ、入ったかと思うとすぐに私の部屋の扉が開かれた。
「お姉ちゃんお姉ちゃん」
 甲高い声にため息が出た。苛立ちが爆発しそうになるのを抑えながら「なに」と返す。
「今日ね、蒼菜、先生に褒められたんだよ。何と全教科満点! 凄くない?」
「凄いね……」
 本当に凄いと思う。私とは違う可愛い笑顔を思い浮かべる。見なくても、屈託ない顔で私を見ていることが分かる。元気印のポニーテールを揺らして、フレッシュな雰囲気を纏う妹。私がなれなかった、いい子。
「でもお姉ちゃんはもっと凄いんだろうなあ! 蒼菜もお姉ちゃんみたいになりたいよ!」
「蒼菜」
 声を荒らげてしまう。うるさい黙れ、と叫んでしまいそうな衝動を抑えた。ん、と悪気のない声が返ってきたから。
「……お母さんにも、その話をしてあげて。きっと喜ぶから」
「うん分かった! お姉ちゃんも今日こそは一緒にご飯食べようね!」
 バタバタと慌ただしく部屋を後にし、階段を降りる音が聞こえる。微かに届けられる母と蒼菜の声も聞きたくなくて、布団を被った。