金髪の男の子が口にした言葉にいっせいと呼ばれた彼は「まあ? アイドル目指してっから」と調子よく返す。
「うぜえ! でも俺の好きな例の女優と知り合ったら紹介してください!」
「そん時はいっせい様と呼べよ。くるしゅうない」
 手をぱたぱたとさせると、ははあ、とお辞儀する金髪の彼。周りにいた男女がドッと笑い声を上げる。
 いいなあ。
 素直にそう思った。
 楽しそう。青春ってやつだ。
 その輪に私を加えてみる。想像してみて、笑顔の弾ける私を見つける。
 なんてね。目を逸らす。私は、もうああいうところにいたくない。疲れてしまったから。友達付き合いとか、空気を読むとか、読めた試しがないけれど、もう分からない。何も分からない。
「じゃあ教室行こっか、一声」
 女の子の声に我に返る。望月くんも、軽く返事をして、保健室を出ていく。しんと静まり返った室内がやけに寒く感じる。
「冷房効きすぎじゃん」
 布団にくるまって、目をつぶった。
 放課後になって紬は保健室まで私の荷物を持ってきてくれた。しつこいくらい心配していたから「もういいって」とつい強い口調で返してしまう。
 すぐに「ごめん、大丈夫だから。今日は一人で帰りたいから先に帰ってくれる?」と出来るだけ優しく返したが、紬の顔は見れなかった。どんな顔をしていても、また傷付けてしまいそうだから。