「望月くんのような陽キャが私なんかを認識するの?」
「なんて言い草だよ。星村、今日、親と学校に来てただろ。こんな時期に珍しいなって」
「ああ……」
 母の代わりに父が有給を取って来た。私が学校で、問題を起こしたから。ただし、私と、担任の教師しか知らないこと。
「で、先生とお父さんに食ってかかってただろ、あれは凄かった」
 思い出したのか楽しそうに笑う。私はその時笑い事じゃなかったが、確かに傍から見れば凄い剣幕だったかもしれない。釣られて笑みが零れた。
「望月くんも……外にいる時とは随分様子が違うんだね」
 軽い調子で言ったつもりだが、彼は笑うのをピタリとやめ、暗い顔に変わっていった。何かまずいことを言ったのか。
「夢の中だから……気抜いてたんだ。ここで見る俺のことは、外では言わないで」
「どうして? 自然体で、いいと思うけど」
「……俺は、星村みたいに気の強いタイプじゃないから。元々はこうなんだ。でも冗談を言って、笑いを取ってれば、強い敵意を向けられることはない」
「作ってるってこと?」
 黙って頷く。改めて見るとやっぱり顔がいい彼だが、それだけで妬まれたり、僻まれることがあるのかもしれない。
 夢で会う前日に、彼を見かけた時のことを思い出す。
「一声は顔がいいからなー」
 休憩時間のこと。それこそ、父と職員室へ向かう時にすれ違った。職員室は二年生の教室がある階にある。あの時とは違い、女装などしていなかったが、あ、あの時の人だ、と分かった。声や顔、それにいっせいという珍しい名前が彼だと証明づけた。