「これ、普通の夢じゃないよね……。なんでこんな……なんか始まりそうじゃん」
「なんかって?」
「デスゲームとか、殺し合いとか」
「二人で? 馬鹿馬鹿しいですね」
 心からの本音だった。そんなもの、少なくとも私の生活にはない。
「冗談じゃん……」
 小さな声で反論してきたが無視して辺りを見回す。見回しても、何もないことしか分からない。
「さすがに夢から出られないとかだったら私も怖いですけど」
「怖いこと言うなあ……」
 その心配はなかった。お互い起床できたから。変な夢だったが忘れようと思った。けれど、その夜に見た夢も彼がいた。
「望月さん、また会いましたね」
「あ……えっと、星村さん。……望月さんは、その、やめてほしいかも……。さん付けて貰えるような、立派な人間じゃないし」
「はあ、めんどくさいですね」
 えっ、と彼が声を漏らしたのと同時に思わず口を手で押さえた。つい出てしまった失礼な言葉を謝ろうとしたが、彼はやっと安心したような笑顔を返してきた。
「星村さんってはっきり言う人なんだね」
「さんはやめてください。……望月くん」
「じゃあ……星村。敬語もなしでいいよ」
 その日、私たちはこの事象について一応話し合った。これはどっちの夢なのか、つまりどっちの夢にお互いが入っているのか。そうじゃなくても、夢という場所があって、そこにお互い入り込んでいるのか。じゃあ夢とは何なのか。どうしてこんなことになっているのか。こうなるまで、お互い普通の夢を見ていたはずなのに。
 心当たりがあるとすれば、この夢を見た日、つまり前日、私が望月くんを見かけたこと。そのことを伝えると、彼も私を見たと言うのだ。