唐突だな、と思いながらも答えるが、本当にいたことがない。高校までの私は明るくて、それなりに周りに人はいた。男女問わず友達が多い方だったから、男の子との交流もあったが……そういったものはこれっぽっちも感じなかった。
「好き、か。そもそも分からないかもしれない。好きなものないかも」
「へえ、じゃあ好きな歌手とかは?」
「まあ一通り聞くけど別に……」
「好きな授業とか」
「……ないかも」
「好きな食べ物とか」
「あ、おにぎりは好き。学食のラーメンのチャーシューも好き。お腹が無限大に入るならもっと食べてるかも」
 望月くんはパチンと指を鳴らした。
「それだよ、もっとっていう気持ち。音楽も耳障りの良いものを好んで聴いてるんだろうし」
「はあ、言われてみればそうかも」
 難しく考えていたがもっと単純でいいのかも。考えて見て、そうだ、と思い立つ。
 望月くんを初めて見かけて記憶から消せなかったのもこれで納得がいく。
「私、望月くんのこと好きなんだ」
「え」
「望月くんと話したかったんだよ」
 そういうことだったのか、と右手のひらで左手の拳を受け止める。ふと望月くんを見ると、はあ、と深いため息を吐いているところだった。
「驚かさないで……」
「何が」
「告白されたのかと思ったじゃん」
 言われてから途端に恥ずかしくなった。でも、自分で言った言葉に嫌な気はしない。むしろ良い気分。続けて彼が口を開く。
「俺を好きにならないでね。星村のことは信用、したいから」