「そういえばそうかも。クリスマスだったわ」
「それに、それが役立ったのかも」
 それ、と指された手首には望月くんがくれたブレスレット。私は首を傾げた。
「これが? 何で?」
「切符? みたいな。私、前に歩咲と望月さんが似てるって話したでしょ。太郎さんも、二人に共通点が無くなったから夢で会わなくなったのかもって言ってた。でも、繋がってるものがある。それが、そのブレスレット。繋げてくれたのかも、二人を。夢の場所に」
「ふうん? これがねえ」
 私は腕を上げ、ブレスレットをしげしげと見つめた。花乃子の言うことは、まさか、と笑い飛ばせるものなのに、そういう気にはならなかった。本当にそうな気がしたから。
「ま、わかんないけどね。精神的な問題かもしれないし」
 そう補足してくれて、私たちは別れた。
 校門をくぐるまでに何人かのクラスメイトに挨拶をされ、心配をされ、元気そうだからと絡まれた。やがて校門にたどり着くと、望月くんの姿を見つける。
 心臓が、大きく高鳴った。ぶわりと体温が上がり、寒いはずなのに、身体が熱い。頬が綻んで、マフラーで口元を隠した。
「おはよう、星村」
「おはよう……」
「話しかけないでって言わないの?」
「もう言わないって分かってくるくせに。馬鹿」
 望月くんの笑い声が上がる。私はじとりと、あくまで普通を装って彼に視線を向ける。
 やっぱり、煌めいて見える。かっこよくて、逞しく見えて、それでいて優しそうで可愛くて。鼓動が高鳴る。苦しい。前よりもずっと望月くんが好きになっている。
 案の定、接点のなかった私たちが絡んでいることで見る人たちがいた。けれどもう私たちは、というよりは、私は、そのことに引け目を感じなくなっていた。
 私は肩で彼に突進した。驚いたように私を見た望月くんに笑いかける。
「世界中の誰も知らないあの場所も良かったけどさ、やっぱり、ありきたりな、みんながいるこの場所で、青春できる方がずっと良いね」
 望月くんはぱちくりと瞬きをすると、嬉しそうに、そうだな、と微笑んだ。