放課後。
今、帰宅中。
幼なじみの柚井千耀と。
「千耀さぁ、
もう少しやさしい言い方してやれよ。
あれは冷た過ぎだ」
「なんでだよ、
好きでもないのに優しくしたら
その方が酷だろ」
「……どっちにしても
千耀は罪なヤツだ」
「相変わらず厳しい言い方、
飛倉碧海くんは」
「なんでフルネーム?
なんで『くん』付け?」
柚井千耀。
千耀とは。
幼稚園から高校までずっと一緒。
そんな千耀は。
とにかくモテる。
告白された人数も忘れるくらいに。
さっきも。
あっさりフッていた。
これで何人の女子たちが泣いたことか。
「その飴、
新発売のだろ」
千耀が飴の袋を開け口に入れた。
「あぁ。
気になったから買ってみた。
かなり美味い」
「俺も買いたかったけど、
売り切れてた」
「よかったら食う?」
「いいの?
食いたい」
「じゃあ、
口開けて」
ん?
なんで?
千耀?
言っていること、おかしくないか?
「いいよ、
自分で食うから」
「あっそ。
なら碧海にはあげない」
なんだそりゃあ‼
駄々っ子か‼
「……まったく、
なんなんだよ、千耀は」
言い合うのも面倒。
仕方ない。
ここは大人しく口を開け……。
んんっ⁉
何だっ、今のはっ⁉
いきなり千耀の唇が俺の唇に触れてっ。
一瞬で口の中が甘くなった⁉
えっ⁉
口の中に飴っ⁉
ということはっ。
まさかの口移しっ⁉