───気付いて、迫られ───
あの日から光を通学路で見かけるようになった。
だが、一度も声をかけたことはない。
なぜなら…
「おはよー!また会ったね」
「おはよう」
光に馴れ馴れしくする女の子がそばに居るからだ。
この光景を見る度に僕の心はザワつく。
でも、この心がザワつく原因が僕には分からずに居た。

「雅?怒ってる?」
光に突然聞かれた。
「怒ってないよ。何で?」
「元気ないし、表情暗いから怒ってるのかなって…なぁなぁ、気晴らしに昼休みいつもとは違う場所でお弁当食べようぜ」
「わかった」
上機嫌な光に僕はまた複雑な気持ちになる。
今の光を誰よりも知っているのは僕なのに。
朝の光のことやプライベートなことは案外何も知らないのだということに今更気付いて悔しがってる。
独占したい、光には僕だけを見て抱いて欲しい。
ここまで思考を巡らせて思い至った。
これが恋だということに。

昼休み授業が終わり教室を出ようとすると
「宮屋、ちょっといいか?」
先生に呼び止められる。
「じゃあ、俺先に行っとくな?」
「あぁ」
光を見送り、先生が口を開く。
「最近ボーッとしてるけど、どうした?」
「いや、なんでもないです」
そう言って立ち去ろうとすると
「いや、明らか何かあっただろう?今日だって授業中も上の空で当てても気付いてなかったじゃないか」
僕の手を握り、引き止める。
「先生には関係ないので」
「関係ないわけないだろ…」
ギュッと抱き締め、声を震わせていた。
「先生…?」
「とりあえず来い」
「わっ…ちょっ!」
先生に引き摺られるように生徒指導室へと連れてこられる。
扉が閉まると先生は俗に言う"壁ドン"をすると
「…好きなんだ、お前が。大切なんだ…何よりも」
と囁く。
「は?」
僕はもう頭が真っ白になって居た。
落ち着きを取り戻した先生が、無人の生徒指導室の窓を開け、先生が口を開く。
「お前を初めて見た時から好きなんだ。嘘じゃない」
そう言い先生はいつも首から提げているペンダントを開き、僕がアップで写っている写真を見せて来たのだった。
「なのに君は村田にベッタリして…」
ここまで言われて僕はようやく事態を把握した。
先生は僕が好きで僕は光が好きでこれが俗に言う三角関係だということに…