───名もなき感情───
テストも無事に終わり、いつもと変わらない光が僕に声をかけて来る。
光はあの通話以来、"月が綺麗ですね"なんて言わなくなった。
あの告白が本気のものだったのか、おふざけによるものだったのか、わからないまま今に至る。
「雅、ちよっといい?」
「光?どうした?」
「今日の放課後暇?」
「暇だけど…どうした?」
「デート、して欲しいな♡」
光が両手をぐーにして顎を支えるようなポーズをする。
「ぶぁはっ!ごほっごほっ…おまっ!」
そのポーズを見た僕は飲んでいた炭酸飲料を吹き噎せた。
「あはははっ」
光はそんな僕の様を見てゲラゲラと笑っていた。
「もービショビショじゃん!」
「はぁ…おい!光のせいだろ?」
「でも吹き出したのは雅じゃん。あー、面白かった!…で、ダメ?」
光には敵わないなと溜息を吐くと僕は光に返事をした。
「はぁ…まあ、いいよ」
放課後、光とショッピングモールに行き各々好きな所を回り、雑貨屋で僕は2人分のミサンガを買った。
外も暗くなって来た頃、光のスマホに連絡が入る。
どうやらもう時間らしい。
「送ってくよ」
「ありがとう」
ふたりで電車に乗ると光は疲れたのかすぐに寝始めた。
「光、お疲れ様」
僕はそっと光の耳に囁くと手首に今日買ったミサンガを付けた。
手首に付いたミサンガに気付いた光が
「これって…ミサンガ?」
と僕に問う。
「あぁ、紐が切れたら願いごとが叶うって言われてるミサンガだな」
「どうして…」
「テスト勉強会頑張ってたからご褒美」
「ありがとうっ!雅!」
「ぐえっ!?」
思い切り抱きついて来た光にギブアップの意を示すように背中を叩く。
「あっ、ごめんごめん。ミサンガ大事にするからな!」
「おう、大事にしてくれ」
「そんじゃ、俺も雅に勉強教えてくれてありがとうのご褒美あげるんだぜ!はい!」
差し出された物を受け取るとチョコレートがあった。
「チョコレート?」
「うん!」
「食べていい?」
「うん!いいよ!」
「いただきます」
パクッ
口に入れるとビターな味が口に広がる。
「ビターだな」
「苦いの苦手だった?」
「いや、大丈夫。ありがとう光」
お礼を言うと光はとびっきりの笑顔で微笑んでいた。
そしてテストが明け一週間後、光は熱を出し学校を休んでいた。
「大丈夫か?」
僕が先生に頼まれたプリントと見舞いのゼリーを持って行くと
すやすやと息を立てて眠る光が居た。
「あら、寝てたのね。今お茶を持って来るからゆっくりしていってね♪」
光のお母さんとすれ違うように部屋に入る。
光が眠るベッドの傍に腰掛け、光の手を握る。
「なぁ、僕はどうなんだろうな…光のこと愛してるのかな…」
改めて光がして来たテスト勉強会最終日の告白について考える。
確かに光と居るのは楽しい。だが、愛しているのかと言われるとよく分からない。
そもそも僕は恋愛などしたことがない。
「…ん…」
パッと手を離し、光に挨拶をする。
「おはよう、光」
光も無事復活し、いつも通りの日常が戻って来た。
通学路で偶然光をみつけた。
「光、久しぶり」
そこに光よりも小さな女の子が光に馴れ馴れしく肩を叩く。
「久しぶり、蘭奈」
「元気してる?学校で友達出来た?」
「あぁ、出来たよ」
そのやり取りを見ていると、普段男同士の日常生活が突然割り込んで来た女の子によって僕の心情は複雑なものになっていった。
テストも無事に終わり、いつもと変わらない光が僕に声をかけて来る。
光はあの通話以来、"月が綺麗ですね"なんて言わなくなった。
あの告白が本気のものだったのか、おふざけによるものだったのか、わからないまま今に至る。
「雅、ちよっといい?」
「光?どうした?」
「今日の放課後暇?」
「暇だけど…どうした?」
「デート、して欲しいな♡」
光が両手をぐーにして顎を支えるようなポーズをする。
「ぶぁはっ!ごほっごほっ…おまっ!」
そのポーズを見た僕は飲んでいた炭酸飲料を吹き噎せた。
「あはははっ」
光はそんな僕の様を見てゲラゲラと笑っていた。
「もービショビショじゃん!」
「はぁ…おい!光のせいだろ?」
「でも吹き出したのは雅じゃん。あー、面白かった!…で、ダメ?」
光には敵わないなと溜息を吐くと僕は光に返事をした。
「はぁ…まあ、いいよ」
放課後、光とショッピングモールに行き各々好きな所を回り、雑貨屋で僕は2人分のミサンガを買った。
外も暗くなって来た頃、光のスマホに連絡が入る。
どうやらもう時間らしい。
「送ってくよ」
「ありがとう」
ふたりで電車に乗ると光は疲れたのかすぐに寝始めた。
「光、お疲れ様」
僕はそっと光の耳に囁くと手首に今日買ったミサンガを付けた。
手首に付いたミサンガに気付いた光が
「これって…ミサンガ?」
と僕に問う。
「あぁ、紐が切れたら願いごとが叶うって言われてるミサンガだな」
「どうして…」
「テスト勉強会頑張ってたからご褒美」
「ありがとうっ!雅!」
「ぐえっ!?」
思い切り抱きついて来た光にギブアップの意を示すように背中を叩く。
「あっ、ごめんごめん。ミサンガ大事にするからな!」
「おう、大事にしてくれ」
「そんじゃ、俺も雅に勉強教えてくれてありがとうのご褒美あげるんだぜ!はい!」
差し出された物を受け取るとチョコレートがあった。
「チョコレート?」
「うん!」
「食べていい?」
「うん!いいよ!」
「いただきます」
パクッ
口に入れるとビターな味が口に広がる。
「ビターだな」
「苦いの苦手だった?」
「いや、大丈夫。ありがとう光」
お礼を言うと光はとびっきりの笑顔で微笑んでいた。
そしてテストが明け一週間後、光は熱を出し学校を休んでいた。
「大丈夫か?」
僕が先生に頼まれたプリントと見舞いのゼリーを持って行くと
すやすやと息を立てて眠る光が居た。
「あら、寝てたのね。今お茶を持って来るからゆっくりしていってね♪」
光のお母さんとすれ違うように部屋に入る。
光が眠るベッドの傍に腰掛け、光の手を握る。
「なぁ、僕はどうなんだろうな…光のこと愛してるのかな…」
改めて光がして来たテスト勉強会最終日の告白について考える。
確かに光と居るのは楽しい。だが、愛しているのかと言われるとよく分からない。
そもそも僕は恋愛などしたことがない。
「…ん…」
パッと手を離し、光に挨拶をする。
「おはよう、光」
光も無事復活し、いつも通りの日常が戻って来た。
通学路で偶然光をみつけた。
「光、久しぶり」
そこに光よりも小さな女の子が光に馴れ馴れしく肩を叩く。
「久しぶり、蘭奈」
「元気してる?学校で友達出来た?」
「あぁ、出来たよ」
そのやり取りを見ていると、普段男同士の日常生活が突然割り込んで来た女の子によって僕の心情は複雑なものになっていった。