───開く心、近づく距離───
球技大会当日
僕は無事、人並みぐらいにデッドボール率を引き下げることに成功してメンバー入りを果たした。
特訓に付き合ってくれた村田はリベロとしてちょこまかと動き回って居た。

試合終了後
初戦敗退が決まった。
だが、不思議と皆楽しそうだった。
そして僕も何だか嫌な気分ではなかった。
「いやー!強かったなぁー!」
村田が僕の肩を抱き寄せ、話かけて来る。
「うん、強かった…でも、楽しかった」
「だよな!俺も同じ気持ちだ」
「特訓、付き合ってくれてありがと」
「おう!」
その日から僕と村田改め光はすっかり仲良くなり、気付けば常に隣に居る関係になっていた。

夏休み中
光の誕生日が近づいてきた8月中旬
クラスメイトからグーループ内メッセージが届く。
"光の誕生日会しようよ!"
"賛成〜!"
僕も賛成の意を示すスタンプを送る
"どこでする?"
"ファミレス?"
"カラオケでいーんじゃね?"
その後も会話は続き光の誕生日会は"カラオケでパーティー"に決まった。
そしてプレゼントは各自で持って来ることになった。
それからプレゼントは何にしようかと思案したが
、結局は決まらないまま当日を迎えてしまった。

指定されたカラオケに着くと既に光を囲んでパーティーが開催されていた。
「お!宮屋ー!こっちこっちー」
「おー」
手招きされ席に着くと
光が僕に向かって小さく手を振る。
僕も光に小さく手を振り返す。
「いやーお前ら球技大会以降仲良いよなー」
「そうか?」
「あぁ!お前らタイプ全然違うのにな。こっちはびっくりしたんだぜ?」
「知るかよ」
他愛ない会話を暫くしていると光からメッセージが届く。
"二次会抜けてデートしたい"
「なー光ーそろそろ二次会に移行すっか?」
「ごめーんこの後は家族に祝って貰うからー」
「そっかー」
光はクラスメイトからの二次会へのお誘いを華麗に躱し、クラスメイトと別れると僕の側へとやって来た。
「光、誕生日おめでとう」
「ありがとう、雅」
光がきゅっと僕の手を掴む。
「ん?どうした?」
「手、繋ぎたいなって…ダメ?」
光はお得意のあざと上目遣いでおねだりをする。
「いいよ」
僕も光の手を握り返し、適当に歩き出した。

ショッピングモールに着くと光は何やらモジモジしだした。
「光?どうした?」
「俺、今日誕生日じゃん?雅からの誕生日プレゼントが欲しいなって、思って」
ここでも僕にプレゼントを上目遣いであざとくおねだりし出した。
可愛い過ぎてどうにかなりそうになりながら、僕は正直にプレゼントがまだ決まらないままだと光に告げた。
すると
「じゃあ、俺とデートしながら決めてよ。何貰っても大事にするからさ」
「デートって僕らは付き合ってもないし、男同士だろ?」
とツッコミを入れると光は
「…んなことはいーだろ!さっ、早く早く!」
と、少し切なげな表情をしているように見えた。