───文化祭準備 真陽side───
秋、学校中が文化祭の話題で持ち切りになって来た頃、先輩は担任の先生に連れられ教室へ行くことが増え顔を合わせることがめっきりなくなった。

「おはようございます。先輩は…」
「今日も居ないぞー」
「そうですか…」
しゅんと頭を下げるときぃやん先生はポンポンと頭を撫でる。
「ま、中入れ」
「はい…」
きぃやん先生に招かれ保険室に入るとそこには僕の担任の先生が居た。
「原さん」
「は、はい…」
思わず身構える。
「文化祭準備がそろそろ始まるんだけど来ない?」
「…行かないです。僕、役立ずなので」
「…わかった。でも、気が向いたらいつでも来てね。先生待ってるから」
その後も担任の先生は僕に何かを言っていたが、僕の頭には入って来なかった。
担任の先生と入れ違いに入って来た先輩に僕は目を奪われる。
先輩は前髪を切りそろえ無造作に付いたウェーブのクセがアクセントとなりお洒落になっていた。
「せ、先輩!?どうしたんですか?」
「はよ、真陽。前見えづらいから切った…どう?似合う?」
「似合ってます」
本当に先輩の髪型はとても似合っていた。
が、先輩のクラスメイトもこの姿を僕より先に見ているんだと思うと何だかモヤモヤした。
「真陽?」
「翼くーん!これ運ぶの手伝ってー!」
遠くから女子生徒の声が聞こえる。
「はーい!じゃあね真陽」
先輩が手を振りながら去って行く。
僕も先輩に手を振り返し見送った。
その日から先輩は謎のイケメンとかなり話題になり、僕とはますます距離が遠ざかって行った。