───誕生日 翼side ───
球技大会から早一ヶ月の6月11日の朝俺はスマホの通知を見てあまりの通知の多さにビビる。
【通知110件】
【お誕生日おめでとうございます!】
【まお〜お誕生日おめでと〜!ね、今日会えない?】
【会えるよね?】
【今日学校行くから】
【翼〜??】
とりあえず最初の原 真陽からのLINEに返信する。
【おはよう、真陽。ありがとう】
【いえいえ!お祝い言えて良かったです】
あれから小さな彼こと原 真陽は保健室登校を始めもうすっかり俺にも心を開き保健室が居場所となっていた。
そしていつの間にか末恐ろしいぐらいの人懐っこさで俺の懐に入り込み懐柔されている。

「まおー!学校遅刻するよー!」
「へーい」
慌てて下の階へ行き、母さんから朝食の食パンを受け取ると俺は食パンを咥えそのまま家を出た。
「行ってきます」
「行ってらっしゃい」
家を出てからは道中俺は元カノの紗綾に警戒しつつ学校へ向かう。
「先輩、おはようございます!」
真陽がいつもの人懐っこい笑顔で挨拶をする。
「…はよ」
すると後ろからぎゅっと誰かからハグされる。
「あっ!まおじゃーん!やーっとみつけたー!ねっ?翼っ!これからサボろ?デートしよ?」
後ろを振り向くと元カノの紗綾が上目遣いで俺の腰に張り付いている。
「嫌だよ」
「いいじゃん!ね?オケ行こーよー」
紗綾が俺の腕に手を回し腕を組む。
「紗綾」
「…今日ぐらいいいじゃん」
「何時でも良くは無いよ、もう帰れ」
「…やだ」
「紗綾…」
「あの!!」
うんざりし始めた所に上目遣いで俺を見つめ口説き続ける紗綾から俺を振り払うように真陽が俺の手を取り走り出した。
「真陽?!」
しばらく走った所に公園が見えた。
「はあ…はぁ…っ」
肩で息をしながら息を切らしていると
「すみませんでした、いきなり引き離すようなことをして」
と本当に申し訳なさそうに苦虫を噛み潰したような表情で謝って来る。
「あー全然いいよ、寧ろありがと。助かった」
「先輩、あの人とは…や、やっぱなんでもないです」
「真陽?」
顔を見ると真陽はそっと目を逸らし逃げるように公園を出て行った。
その日以来真陽は保健室でも個室に篭もり、俺と顔を合わせることもなくなり季節は夏へと移り変わって行った。