「はい、では本日の5、6限目を使って人権学習を行いたいと思います。」

どんよりとした空によく似合うテーマだな、

と思いながら教卓に立つ小谷先生を見つめる。

「人権学習のテーマは、」


いじめです。

私の住む地域の学校は、
総合的な学習の時間に取り組む内容について大方テーマを共有している。

例えば、四月と五月は
新しい通学路や、慣れない登下校で交通安全に細心の注意を払う必要がある

ということから、「交通安全月間」となっているし、

夏休みが終わり、新学期が始まる九月は「自殺防止月間」となっている。

そして、六月七月。
慣れてきた学校生活、慣れ親しんだクラスメイト。そして、孤立している生徒。

これらの要素を結びつけると、「いじめ防止月間」となるらしい。

「五限目は班になって、いじめ防止をテーマにした標語を一つ考えてください。
そして、その標語に込められたメッセージなどをワークシートに記入してください。
六限目は、班で完成した標語をクラスで共有する時間をとります。
班で協力して…」

素敵な作品を作りましょう、

という小谷先生の説明を聞きながら

(いじめ防止の標語がどうしたら素敵な作品になるのか、という説明はないんだよね)

と心の中で皮肉をこぼす。

「じゃあ、早速、班のかたちになってステキな作品を作ってみせようじゃないか!」

なんて一人張り切っている五十嵐君には申し訳ないけど、

五十嵐君に任せてしまった方がいいな、

なんて逃げ道を探してしまう私だった。