空席の目の前の席を見て、風奏は言葉を失った。
なんで、、?
最悪な結果が脳裏に浮かんだ。
必死に振り払い、遅刻かもしれない。と自分に言い聞かせた。
でも、、昼休みになっても、教室に英子は現れなかった。
私のせいだ、、。私が、、。また、、。風奏の心の中は不安でいっぱいだった。
居ても立っても居られず、思わず教室を出た。廊下を走った。走っているうちに涙が湧いてきた。
音楽室に飛び込んだ。
深く深呼吸しながら扉を閉めた。
震える足を懸命に動かし、ピアノの椅子に座った。
ピアノの鍵盤に両手を勢いよく、ぶつけた。
不協和音。
静かな、小さな空間に不快で、恐怖を抱かせるような、音が鳴り響いた。
「風奏」
千絃の声がした。千絃が呼んでる。
だが、風奏は返事をしないで、耳障りな和音を鳴らし続ける。
「おい、、風奏。、、風奏!!、、こっち向けよ。」
強引に手を引っ張り、風奏の手を止める。
「なにがあった?」
鋭く、でも、優しい一言だった。
途端。
風奏の瞳から大粒の涙が溢れ出た。我慢できなかった。
「ち、千絃、、私、また、人を、傷つけちゃった。傷つけないように、気をつけてたのに。英子が、学校に、来てないの、、。どうしよう、、。」
泣きながら、風奏は千絃に訴えた。
「詳しく教えろ。」
昨日の放課後の一件を千絃に教えた。
「あ?お前が悪いだろ。全部忘れてんだろ?酷いだろそれ。姫路は覚えてくれてるんだろ?」
厳しい一言。
「うん、、。私が全部、、悪い。」
「わかってるんなら、謝れよ。」
「だから、学校に来てないの。絶対私が傷つけちゃったから、避けられちゃったんだよ。きっと、、。」
気分を落としたように弱々しく言った。
「そんなこと、姫路にしかわかんねぇだろうが。勝手に決めつけんなよ。来ないなら、謝りに行けよ。自分から会いに行け。会いに行っても、無理なら、仕方ねぇかもしんねぇ。でも、動かずにこんなところでチンタラしてんじゃねぇよ。」
風奏は目を見開いた。
「そう、、そう、だよね。勝手に1人で、、しかもこんなとこで。ごめん、、。千絃、ありがと。」
「おう。」
「早速行ってくる!、、、。何処に?」
風奏は首を傾げ、千絃に目を向ける。
「知るか!!」
「だって、私、英子の家、知らない。それに、連絡先も、、。」
英子のこと、なにも知らない。千絃との一件で、人に少しでも、歩み寄ってみようって思ったけど、1番歩み寄らないといけない人に歩み寄れてなかった。過去が、前に進もうとした足を動かなくしていた。向き合って、歩み寄っていないのは、、私だった。怖くて、怖くて、動けないから。そう、心の中で風奏は気づいた。
「あ?なんだそれ。まあいいや、アイツに訊いてやるよ。」
と言って千絃はスマホを取り出した。
「てか、俺、わかんねぇんだけど。お前、なんで中学の頃の記憶ねぇの?」
スマホを操作しながら言った。
「覚えてないんだもん。」
「は?覚えてねぇ、じゃねぇよ。じゃ、なにがあったんだよ。中学ん時。」
そう訊いた。
「っ!?」
頭が痛い。心臓が高鳴る。
──あれだ、、。
風奏は直感した。
──あの、出来事のせいで。私自身のせいで。私は、おかしくなった。ピアノが、、、大好きな、ピアノが、弾けなくなった。
体ではわかっていた。けど、何故か今の今まで気づかなかった風奏がいた。あれを、思い出したくない風奏がいた。
「おい、風奏、、?風奏!」
「あ、ごめん。」
千絃の声に随分気が付かなかった風奏。心配そうに千絃が風奏を見つめている。
「あのね、聴いてほしい。私が、どうしてピアノを弾けなくなったのか。」
意を決して、千絃に目を向けた。
千絃が息を呑んだ。
これを了解の意ととって風奏は語り出した。
なんで、、?
最悪な結果が脳裏に浮かんだ。
必死に振り払い、遅刻かもしれない。と自分に言い聞かせた。
でも、、昼休みになっても、教室に英子は現れなかった。
私のせいだ、、。私が、、。また、、。風奏の心の中は不安でいっぱいだった。
居ても立っても居られず、思わず教室を出た。廊下を走った。走っているうちに涙が湧いてきた。
音楽室に飛び込んだ。
深く深呼吸しながら扉を閉めた。
震える足を懸命に動かし、ピアノの椅子に座った。
ピアノの鍵盤に両手を勢いよく、ぶつけた。
不協和音。
静かな、小さな空間に不快で、恐怖を抱かせるような、音が鳴り響いた。
「風奏」
千絃の声がした。千絃が呼んでる。
だが、風奏は返事をしないで、耳障りな和音を鳴らし続ける。
「おい、、風奏。、、風奏!!、、こっち向けよ。」
強引に手を引っ張り、風奏の手を止める。
「なにがあった?」
鋭く、でも、優しい一言だった。
途端。
風奏の瞳から大粒の涙が溢れ出た。我慢できなかった。
「ち、千絃、、私、また、人を、傷つけちゃった。傷つけないように、気をつけてたのに。英子が、学校に、来てないの、、。どうしよう、、。」
泣きながら、風奏は千絃に訴えた。
「詳しく教えろ。」
昨日の放課後の一件を千絃に教えた。
「あ?お前が悪いだろ。全部忘れてんだろ?酷いだろそれ。姫路は覚えてくれてるんだろ?」
厳しい一言。
「うん、、。私が全部、、悪い。」
「わかってるんなら、謝れよ。」
「だから、学校に来てないの。絶対私が傷つけちゃったから、避けられちゃったんだよ。きっと、、。」
気分を落としたように弱々しく言った。
「そんなこと、姫路にしかわかんねぇだろうが。勝手に決めつけんなよ。来ないなら、謝りに行けよ。自分から会いに行け。会いに行っても、無理なら、仕方ねぇかもしんねぇ。でも、動かずにこんなところでチンタラしてんじゃねぇよ。」
風奏は目を見開いた。
「そう、、そう、だよね。勝手に1人で、、しかもこんなとこで。ごめん、、。千絃、ありがと。」
「おう。」
「早速行ってくる!、、、。何処に?」
風奏は首を傾げ、千絃に目を向ける。
「知るか!!」
「だって、私、英子の家、知らない。それに、連絡先も、、。」
英子のこと、なにも知らない。千絃との一件で、人に少しでも、歩み寄ってみようって思ったけど、1番歩み寄らないといけない人に歩み寄れてなかった。過去が、前に進もうとした足を動かなくしていた。向き合って、歩み寄っていないのは、、私だった。怖くて、怖くて、動けないから。そう、心の中で風奏は気づいた。
「あ?なんだそれ。まあいいや、アイツに訊いてやるよ。」
と言って千絃はスマホを取り出した。
「てか、俺、わかんねぇんだけど。お前、なんで中学の頃の記憶ねぇの?」
スマホを操作しながら言った。
「覚えてないんだもん。」
「は?覚えてねぇ、じゃねぇよ。じゃ、なにがあったんだよ。中学ん時。」
そう訊いた。
「っ!?」
頭が痛い。心臓が高鳴る。
──あれだ、、。
風奏は直感した。
──あの、出来事のせいで。私自身のせいで。私は、おかしくなった。ピアノが、、、大好きな、ピアノが、弾けなくなった。
体ではわかっていた。けど、何故か今の今まで気づかなかった風奏がいた。あれを、思い出したくない風奏がいた。
「おい、風奏、、?風奏!」
「あ、ごめん。」
千絃の声に随分気が付かなかった風奏。心配そうに千絃が風奏を見つめている。
「あのね、聴いてほしい。私が、どうしてピアノを弾けなくなったのか。」
意を決して、千絃に目を向けた。
千絃が息を呑んだ。
これを了解の意ととって風奏は語り出した。