拝啓 もう会えない君へ
やっと、心の整理がついたので、手紙を書きます。
もう、あれから、10年経った。だから、俺、今年で28歳だ。早いな。でも、やっと、10年だ。
待たせてごめん、、。えっと、、なにから書いたらいいかな?風奏がいなくなってから、いろんなことがあった。それに、伝えたいことも、いっぱいある。長くなっちゃうけど、ゆっくり聴いてほしい。
12年前、俺たちが高1の時。あの時は本当に楽しかった。
特に、夏。いつまでも、あの夏の思い出は俺の心の中で生きてる。今でも、風奏の心の中に生きてたらいいな。
あの頃、風奏は、俺が私を変えてくれた。って言ってくれたよな。ホントに俺、風奏を救えたかな?だって、あの頃、恥ずかしくて、自分に素直になれなくて、きつい言葉ばっか言ってた気がする。まぁ、でも、それで風奏を変えられたなら、よかったのかな?けど、ちょっと今、後悔してんだ。もっと言葉を変えればよかったかなって。
夏休みのピアノコンクールの演奏、すごかった。俺、絶対風奏が優勝すると思ってた。本当に優勝したな。無茶苦茶、嬉しかった。やっぱり、風奏はいい音を出すよな。綺麗で、あたたかい音。俺、本当に大好きだ。風奏の音が1番好き。あの時、俺、風奏にそのこと伝えられてなかった。なんか、嬉しすぎて、はしゃいじゃってさ、伝えてなかった。ごめんな。もっとはやく、言えばよかった。
あの後、1ヶ月もしないうちに倒れるなんて思ってもみなかった。
突然倒れた時、本当にびっくりした。俺は耳の病なのに、彼女も病気になるなんてな。しかも、俺ら、会ってまだ半年そこらだった。衝撃は本当に大きかった。
そのまま入院して、2年以上闘病するなんて思わなかった。
そんな中、俺の初ライブに来てくれたよな。びっくりしたんだからな。
あの海辺のホールでした、デビューライブ。
Night Melody 歌ってたら、風奏が視界に入った。
絶句してたら、ピースサイン送ってくるし。
めちゃくちゃ驚いて、歌詞とびかけたんだからな。でも、めちゃくちゃ、嬉しかった。
俺もお返しに手を銃の形にして撃ってあげたよな。風奏の驚いた表情、可愛かったな。忘れられない。それから、ずっと風奏見て歌っちゃったけど、、。
あのあと、海で待っててくれた。
嬉しくなって、俺、思いっきり抱きしめちゃったんだよな。
嬉しくて、興奮しちゃってた。いきなりだったけど、嬉しそうに笑ってくれてよかった。
ホントに、ありがとう。ライブ、聴きにきてくれて。
勇気を貰った。怖かったし、緊張して、本当に不安だったんだ。でも、風奏が聴いてくれてるってわかったから、怖くなくなった。
「ねぇ、千絃。ライブで私のことばっか見ないでよね。ファンの皆さんに失礼だよ。気持ちは嬉しいけど、歌手の時は、ファンの皆さんに歌を届けなくちゃ。私の願いは、千絃の歌が世界に届いて、世界中の人たちが聴いてくれることなんだから。」
海を眺めながら風奏は、俺に大切なことを教えてくれた。
ありがとう。
「でも、、。私と2人だけの時は、私だけに、たくさん歌を、届けてほしい。約束、だよ?」
指切りして、約束したよな。
ちょっと報告なんだけど、、。デビューして何年か経ったあと、耳のこと公表した。応援してくれてるみんなに、隠してるなんて嫌だなって思ったんだ。
あと、、左耳の聴力がなくなったんだ。でも右耳は、治療のおかげで奇跡的に回復した。少し聞こえづらいけど、日常を送れるくらいに。
いい機会だと思って、公表した。片耳が聞こえない状態で歌手をするなんてって批判の声もあったけど、応援の声もたくさんいただいた。救われた気持ちになった。
俺たち、stRINGs melody. (実は、バンド名ちょっと変えたんだ。読み方は一緒。たくさんの思いを込めた。1番、込めた想いは、永遠に一緒だ、って想い、かな。)を、今も、本当にありがたいことにたくさんの人が応援してくれてる。それに応えられるように。俺たちの歌で、たくさんの人を救えるように。世界に、届けられるように。歌手として最高の歌を届けられるように、頑張るよ。
じゃあ、俺らの今までのこと、話すな。
葛木は、今も俺らのバンドの作詞担当をしてくれてるぞ。これまた、いい詩描きやがるんだ。たくさんの人の心に寄り添うような。たくさんの人の心を、あたためるような。本当に、すごいよ。
ちなみに、葛木は、妃詩(ひな)の名前で活動してるぜ。(一応いつも、俺ら、ひな呼びだが、此処ではこのまま葛木で通す。)
でも、俺が高校3年生の時、突然風奏が、葛木と会いたいって言った時もびっくりしたな。
時間が経つうちに、、やっぱり、謝りたい。このまま、会わないで生きていくなんて嫌だ。って思った。って風奏言ってたよな。
その思いは、葛木も一緒だったみたいだな。
葛木も、謝りたかった、けど、全部私が悪いから、会わない方がいいんだって思ってたって言うし。
2人は似たもの同士だったってことだよな。
てか、お互い悪い、会ったらいけない、って思ってるってなに?普通に面白いんだけど。
今では笑い話にできるけど、結構葛木探すのに時間かかったからな。でも、まぁ、、風奏に、未練なくいって欲しかったし。風奏のためなら、なんでも、するけどよ。
でも、葛木に、病気のことギリギリまで話してなかったのにはどうかとは思ったけど。
あの頃、通院しながら、自宅療養してただろ?だから葛木も風奏の病気のこと気づいてなかったみたいだけど。風奏は葛木に心配かけたくないって言ってたから、俺も黙ってたけど、、。
だけど、葛木も、風奏の気持ち、わかってくれてたみたいで、よかったよ。
そうそう、げんのやつもついに小説家デビューするんだ。デビュー作、なんと、俺らの話らしいぞ。ものすごく良かったって葛木が言ってたぜ。実を言うと、まだ俺、読んでないんだ。俺の分と、風奏の分の小説、買ったから、一緒に読もうぜ。楽しみだな。
げんと葛木お互い忙しいから、最近会えてないみたいだけど今でも相思相愛の仲だぜ。
山科だけど、デザイン系の道に進んだんだ。絵がすげぇうまくてさ、俺らのアルバムの表紙描いてもらってるんだ。毎回アルバムのデザイン、山科が考えてくれてる。
彼氏のラッパーくんともコラボしたぜ。ラッパーくん、HIBITO(響人)くんっていうんだけど、めちゃくちゃかっけぇんだ。ラップもスゲェし、またコラボしたいな。
あと、りちのやつ、今月に姫路と結婚するんだ。俺と風奏に招待状が来たぜ。一緒に行こうな。
姫路は弁護士として、法廷に立ってる。
風奏のおかげ。風奏が見守ってくれたから。風奏が力をくれたの。って姫路言ってたぜ。
「英子なら、絶対なれるよ!」
って風奏言ってたもんな。その言葉が、絶対姫路の励みになってると思うぜ。
一緒に、姫路が法廷に立ってる姿、見たかった、、。
結婚してからも弁護士を続けるらしい。もちろん、りちもバンドを続ける。
ってか、姫路、結婚したら村雨英子になるんだけどさ。だから、なんて呼べばいいんだってげんと悩んでたんだけどよ。その時、げんなんて言ったと思う?
「お姫様みたいなオーラ出てるから、姫で良くね?」だぜ。
めちゃくちゃ面白くね?
俺、大爆笑しちゃってさ、ヒメに怒られた。
あ、忘れるとこだった。風奏の弟、奏空(かなた)だけど、茜音(あかね)ちゃんって子といい感じなんだ。茜音ちゃん、実は俺と同じく、耳に障がいを持ってて。その子と話すために、奏空のやつ、手話に興味を持ったんだ。今、俺が教えてるんだぜ。結構覚えが早くてさ。意外とあいつ、勉強熱心なところあったんだな。
手話通訳士とか、あと、海外支援とか、人助けに興味があるらしい。奏空は優しいやつだから、お似合いな気がするよ。
奏空と会うたび言い争いしてたのが懐かしいな。風奏の取り合いみたいな、しょうもない言い争い。今では、結構仲いいぜ。
俺の、1番の思い出は、やっぱり風奏との最後のデートだ。
いつも、病院デートだったからな。風奏がいつもよりはしゃいでた。いつもより、笑顔だった。
学校に行ったな。俺たちが初めて出会った、音楽室で、風奏がピアノを弾いて、俺が歌って、俺たちのwalking in the night 奏でた。天才ピアニストと天才シンガーが合わされば、最強だもんな。
それから、海に行った。一緒にお弁当食べて、綺麗な景色を眺めた。
今でも、心の中で俺の大好きな風奏の笑顔、風奏の音、風奏との思い出、全部生きてる。
心の中の笑顔も大好き。心の中の、音も大好き。
心の中の風奏もいいけど、、もう一度、風奏に、大好きって言って、一緒に音楽を奏でて、風奏の音を生で聴きたい、笑顔を、みたい。
もう一度、、本当にもう一度だけでいいから、会いたい。
叶わないってわかってる、けど、毎日、毎日、風奏に会いたいって思ってる。ずっと、ずっと、思ってる。
あぁ、風奏にこんなこと言ったらダメだよな。風奏の方が辛いだろ?
ごめん。下向きなこと書こうと思ったわけじゃなかったんだ。今の、俺の気持ちっていうのかな?風奏を忘れたわけじゃない、ずっと心の中にいる、って伝えたかったんだ。
風奏の最期は、笑顔だった。
「奏空、お母さんと、お父さん、よろしくね。いつまでも、私ばっかは、だめだよ。奏空の、とっても優しいところ、私、大好きだよ。ずっと、優しくて、人に寄り添っていける人でいてね。」
「英子、私の最高の親友でいてくれてありがとう。助けてくれてありがとう。高校生活、とっても楽しかった。いつまでも、親友でいてね。英子、応援してる。いつまでも、見守ってるから。」
「村雨くん、英子と千絃をよろしくね。今までありがとう。最高の音楽を千絃と一緒に、奏で続けてね。」
「ヒナ、、。病気のこと、最近まで黙ってて、ごめんね。ほんと、ヒナには、謝らないといけないことばっかだね。でも、それ以上に、感謝でいっぱいだよ。今までありがとう。最高の親友でいてくれてありがとう。今度こそ、ヒナの夢、応援してる。最高の詩を描けるんだから、自信もって。私と出会ってくれて、ありがとう。」
「紗楽ちゃん、短い間だったけど、仲良くしてくれて、ありがとう。ヒナと、私をもう一度繋ぐ架け橋になってくれてありがとう。優しくて、明るい、最高の親友だよ。」
「深海くん、ヒナを、よろしくね。深海くんが小説家になるの、楽しみにしてるから。応援してるよ。短い間だったけど、ありがとう。」
みんなに、最高な言葉を残してくれたよな。
「千絃、私を助けてくれてありがとう。好きになってくれてありがとう。私に千絃の歌を聴かせてくれてありがとう。、、もっと、一緒にいられなくて、ごめんね。一緒に生きていけなくてごめん。私が、いなくなっても、、」
「そんなこと、言うなよ。」
思わず、口を挟んだ。風奏と、離れ離れになるのが怖くて、認めたくなくて、素直になれなかった。
前々から、覚悟はしてたけど、、でも、いざとなったら、怖くなった。
俺は、風奏になにかしてあげられたかなって、後悔の波が押し寄せてきた。
綺麗な音を奏でる、いつも明るい、病気にも、強く挑んだ俺の大好きな、女の子。風奏が、いなくなったら、、って思ったら本当に怖くなった。風奏のいない世界なんて、、嫌だった。
「うんん。ひとつだけ、わがまま言うね。私が、いなくなっても、歌は、歌い続けて。私の最後のお願い。辛くても、悲しくても、歌い続けて。もしも、もしもだけど、歌手を辞めちゃったとしても、歌は歌い続けて。ずっと、私は聴き続けたいから。千絃の歌が、大好きだから。千絃が、私の音は、希望だって、言ってくれたでしょ?同じように、千絃の音は、私に、希望をくれた。そして、これからも、希望や幸せを与え続けてほしい。だから、千絃の歌を奏で続けて。」
「おう、、。風奏に、聴こえるように、歌う。」
「約束だよ。大好きだよ。、、でも、私のこと、忘れていいんだよ?他に優しい人がいたら、その人を好きになってもいいからね?」
「は?やっぱ、お前、馬鹿だな。俺は、一生風奏の彼氏だ。一生、風奏のことが大好きな、藍川千絃だ。だから、そんなこと言うな。一生俺のこと好きでいろ。」
「うん。ありがと。」
「おう!」
「大好き、、。」
俺らの目は涙でいっぱいだった。でも、全員が笑顔だった。風奏が最期まで、弱音を吐かずに、笑顔で俺たちと接してくれたからだよな。
それから、風奏は、自分の人生を全うし、空の彼方へ旅立った。
風奏が、いなくなって、何度も、何度も、挫けそうになった。心が空っぽになった。なんで生きてるんだろうって思ったこともある。
でも、風奏の笑顔が、俺を前に向かせてくれた。
風奏の残してくれた、言葉が支えになった。
風奏との約束が力になった。
歌を歌うことで生きていく力が湧いた。
歌を、歌えば、風奏がそばで聴いてくれていると思えたから。
でも、風奏がいないって思いたくなくて、風奏への歌を歌ってこなかった。
だけど、やっと歌う、決心がついた。
そして、葛木と一緒に、歌詞を考えた。姫路や、げん、山科とも、詩を考えた。そして、りちと一緒に、作曲した。風奏との、思い出の詰まった、みんなで風奏に送る、歌、だ。
曲名は、『君に送る希望歌(レクイエム)』
風奏が、音を、希望に変えてくれたから、希望歌で、君に送るレクイエムと読ませた。
鎮魂歌なんて、嫌だったからな。悲しいより、希望が詰まった、あたたかい曲の方が風奏は喜んでくれるだろうって思ったんだ。笑顔で、明るい風奏にはこっちの方がお似合いだ。
風奏との約束
“風奏のために、風奏に聴こえるように、歌は一生歌い続ける”
を、守りたい。
そして風奏に、俺の歌をたくさん届けたい。
だから、俺は奏で続ける、君への希望歌(レクイエム)を。
最後に、お別れが嫌で、強がって、風奏に言えなかったことを言います。
俺と、出会ってくれて、ありがとう。
俺を、助けてくれて、ありがとう。
俺を、大好きになってくれてありがとう。
大好きな風奏へ、この思いが届きますように。
敬具
藍川千絃
やっと、心の整理がついたので、手紙を書きます。
もう、あれから、10年経った。だから、俺、今年で28歳だ。早いな。でも、やっと、10年だ。
待たせてごめん、、。えっと、、なにから書いたらいいかな?風奏がいなくなってから、いろんなことがあった。それに、伝えたいことも、いっぱいある。長くなっちゃうけど、ゆっくり聴いてほしい。
12年前、俺たちが高1の時。あの時は本当に楽しかった。
特に、夏。いつまでも、あの夏の思い出は俺の心の中で生きてる。今でも、風奏の心の中に生きてたらいいな。
あの頃、風奏は、俺が私を変えてくれた。って言ってくれたよな。ホントに俺、風奏を救えたかな?だって、あの頃、恥ずかしくて、自分に素直になれなくて、きつい言葉ばっか言ってた気がする。まぁ、でも、それで風奏を変えられたなら、よかったのかな?けど、ちょっと今、後悔してんだ。もっと言葉を変えればよかったかなって。
夏休みのピアノコンクールの演奏、すごかった。俺、絶対風奏が優勝すると思ってた。本当に優勝したな。無茶苦茶、嬉しかった。やっぱり、風奏はいい音を出すよな。綺麗で、あたたかい音。俺、本当に大好きだ。風奏の音が1番好き。あの時、俺、風奏にそのこと伝えられてなかった。なんか、嬉しすぎて、はしゃいじゃってさ、伝えてなかった。ごめんな。もっとはやく、言えばよかった。
あの後、1ヶ月もしないうちに倒れるなんて思ってもみなかった。
突然倒れた時、本当にびっくりした。俺は耳の病なのに、彼女も病気になるなんてな。しかも、俺ら、会ってまだ半年そこらだった。衝撃は本当に大きかった。
そのまま入院して、2年以上闘病するなんて思わなかった。
そんな中、俺の初ライブに来てくれたよな。びっくりしたんだからな。
あの海辺のホールでした、デビューライブ。
Night Melody 歌ってたら、風奏が視界に入った。
絶句してたら、ピースサイン送ってくるし。
めちゃくちゃ驚いて、歌詞とびかけたんだからな。でも、めちゃくちゃ、嬉しかった。
俺もお返しに手を銃の形にして撃ってあげたよな。風奏の驚いた表情、可愛かったな。忘れられない。それから、ずっと風奏見て歌っちゃったけど、、。
あのあと、海で待っててくれた。
嬉しくなって、俺、思いっきり抱きしめちゃったんだよな。
嬉しくて、興奮しちゃってた。いきなりだったけど、嬉しそうに笑ってくれてよかった。
ホントに、ありがとう。ライブ、聴きにきてくれて。
勇気を貰った。怖かったし、緊張して、本当に不安だったんだ。でも、風奏が聴いてくれてるってわかったから、怖くなくなった。
「ねぇ、千絃。ライブで私のことばっか見ないでよね。ファンの皆さんに失礼だよ。気持ちは嬉しいけど、歌手の時は、ファンの皆さんに歌を届けなくちゃ。私の願いは、千絃の歌が世界に届いて、世界中の人たちが聴いてくれることなんだから。」
海を眺めながら風奏は、俺に大切なことを教えてくれた。
ありがとう。
「でも、、。私と2人だけの時は、私だけに、たくさん歌を、届けてほしい。約束、だよ?」
指切りして、約束したよな。
ちょっと報告なんだけど、、。デビューして何年か経ったあと、耳のこと公表した。応援してくれてるみんなに、隠してるなんて嫌だなって思ったんだ。
あと、、左耳の聴力がなくなったんだ。でも右耳は、治療のおかげで奇跡的に回復した。少し聞こえづらいけど、日常を送れるくらいに。
いい機会だと思って、公表した。片耳が聞こえない状態で歌手をするなんてって批判の声もあったけど、応援の声もたくさんいただいた。救われた気持ちになった。
俺たち、stRINGs melody. (実は、バンド名ちょっと変えたんだ。読み方は一緒。たくさんの思いを込めた。1番、込めた想いは、永遠に一緒だ、って想い、かな。)を、今も、本当にありがたいことにたくさんの人が応援してくれてる。それに応えられるように。俺たちの歌で、たくさんの人を救えるように。世界に、届けられるように。歌手として最高の歌を届けられるように、頑張るよ。
じゃあ、俺らの今までのこと、話すな。
葛木は、今も俺らのバンドの作詞担当をしてくれてるぞ。これまた、いい詩描きやがるんだ。たくさんの人の心に寄り添うような。たくさんの人の心を、あたためるような。本当に、すごいよ。
ちなみに、葛木は、妃詩(ひな)の名前で活動してるぜ。(一応いつも、俺ら、ひな呼びだが、此処ではこのまま葛木で通す。)
でも、俺が高校3年生の時、突然風奏が、葛木と会いたいって言った時もびっくりしたな。
時間が経つうちに、、やっぱり、謝りたい。このまま、会わないで生きていくなんて嫌だ。って思った。って風奏言ってたよな。
その思いは、葛木も一緒だったみたいだな。
葛木も、謝りたかった、けど、全部私が悪いから、会わない方がいいんだって思ってたって言うし。
2人は似たもの同士だったってことだよな。
てか、お互い悪い、会ったらいけない、って思ってるってなに?普通に面白いんだけど。
今では笑い話にできるけど、結構葛木探すのに時間かかったからな。でも、まぁ、、風奏に、未練なくいって欲しかったし。風奏のためなら、なんでも、するけどよ。
でも、葛木に、病気のことギリギリまで話してなかったのにはどうかとは思ったけど。
あの頃、通院しながら、自宅療養してただろ?だから葛木も風奏の病気のこと気づいてなかったみたいだけど。風奏は葛木に心配かけたくないって言ってたから、俺も黙ってたけど、、。
だけど、葛木も、風奏の気持ち、わかってくれてたみたいで、よかったよ。
そうそう、げんのやつもついに小説家デビューするんだ。デビュー作、なんと、俺らの話らしいぞ。ものすごく良かったって葛木が言ってたぜ。実を言うと、まだ俺、読んでないんだ。俺の分と、風奏の分の小説、買ったから、一緒に読もうぜ。楽しみだな。
げんと葛木お互い忙しいから、最近会えてないみたいだけど今でも相思相愛の仲だぜ。
山科だけど、デザイン系の道に進んだんだ。絵がすげぇうまくてさ、俺らのアルバムの表紙描いてもらってるんだ。毎回アルバムのデザイン、山科が考えてくれてる。
彼氏のラッパーくんともコラボしたぜ。ラッパーくん、HIBITO(響人)くんっていうんだけど、めちゃくちゃかっけぇんだ。ラップもスゲェし、またコラボしたいな。
あと、りちのやつ、今月に姫路と結婚するんだ。俺と風奏に招待状が来たぜ。一緒に行こうな。
姫路は弁護士として、法廷に立ってる。
風奏のおかげ。風奏が見守ってくれたから。風奏が力をくれたの。って姫路言ってたぜ。
「英子なら、絶対なれるよ!」
って風奏言ってたもんな。その言葉が、絶対姫路の励みになってると思うぜ。
一緒に、姫路が法廷に立ってる姿、見たかった、、。
結婚してからも弁護士を続けるらしい。もちろん、りちもバンドを続ける。
ってか、姫路、結婚したら村雨英子になるんだけどさ。だから、なんて呼べばいいんだってげんと悩んでたんだけどよ。その時、げんなんて言ったと思う?
「お姫様みたいなオーラ出てるから、姫で良くね?」だぜ。
めちゃくちゃ面白くね?
俺、大爆笑しちゃってさ、ヒメに怒られた。
あ、忘れるとこだった。風奏の弟、奏空(かなた)だけど、茜音(あかね)ちゃんって子といい感じなんだ。茜音ちゃん、実は俺と同じく、耳に障がいを持ってて。その子と話すために、奏空のやつ、手話に興味を持ったんだ。今、俺が教えてるんだぜ。結構覚えが早くてさ。意外とあいつ、勉強熱心なところあったんだな。
手話通訳士とか、あと、海外支援とか、人助けに興味があるらしい。奏空は優しいやつだから、お似合いな気がするよ。
奏空と会うたび言い争いしてたのが懐かしいな。風奏の取り合いみたいな、しょうもない言い争い。今では、結構仲いいぜ。
俺の、1番の思い出は、やっぱり風奏との最後のデートだ。
いつも、病院デートだったからな。風奏がいつもよりはしゃいでた。いつもより、笑顔だった。
学校に行ったな。俺たちが初めて出会った、音楽室で、風奏がピアノを弾いて、俺が歌って、俺たちのwalking in the night 奏でた。天才ピアニストと天才シンガーが合わされば、最強だもんな。
それから、海に行った。一緒にお弁当食べて、綺麗な景色を眺めた。
今でも、心の中で俺の大好きな風奏の笑顔、風奏の音、風奏との思い出、全部生きてる。
心の中の笑顔も大好き。心の中の、音も大好き。
心の中の風奏もいいけど、、もう一度、風奏に、大好きって言って、一緒に音楽を奏でて、風奏の音を生で聴きたい、笑顔を、みたい。
もう一度、、本当にもう一度だけでいいから、会いたい。
叶わないってわかってる、けど、毎日、毎日、風奏に会いたいって思ってる。ずっと、ずっと、思ってる。
あぁ、風奏にこんなこと言ったらダメだよな。風奏の方が辛いだろ?
ごめん。下向きなこと書こうと思ったわけじゃなかったんだ。今の、俺の気持ちっていうのかな?風奏を忘れたわけじゃない、ずっと心の中にいる、って伝えたかったんだ。
風奏の最期は、笑顔だった。
「奏空、お母さんと、お父さん、よろしくね。いつまでも、私ばっかは、だめだよ。奏空の、とっても優しいところ、私、大好きだよ。ずっと、優しくて、人に寄り添っていける人でいてね。」
「英子、私の最高の親友でいてくれてありがとう。助けてくれてありがとう。高校生活、とっても楽しかった。いつまでも、親友でいてね。英子、応援してる。いつまでも、見守ってるから。」
「村雨くん、英子と千絃をよろしくね。今までありがとう。最高の音楽を千絃と一緒に、奏で続けてね。」
「ヒナ、、。病気のこと、最近まで黙ってて、ごめんね。ほんと、ヒナには、謝らないといけないことばっかだね。でも、それ以上に、感謝でいっぱいだよ。今までありがとう。最高の親友でいてくれてありがとう。今度こそ、ヒナの夢、応援してる。最高の詩を描けるんだから、自信もって。私と出会ってくれて、ありがとう。」
「紗楽ちゃん、短い間だったけど、仲良くしてくれて、ありがとう。ヒナと、私をもう一度繋ぐ架け橋になってくれてありがとう。優しくて、明るい、最高の親友だよ。」
「深海くん、ヒナを、よろしくね。深海くんが小説家になるの、楽しみにしてるから。応援してるよ。短い間だったけど、ありがとう。」
みんなに、最高な言葉を残してくれたよな。
「千絃、私を助けてくれてありがとう。好きになってくれてありがとう。私に千絃の歌を聴かせてくれてありがとう。、、もっと、一緒にいられなくて、ごめんね。一緒に生きていけなくてごめん。私が、いなくなっても、、」
「そんなこと、言うなよ。」
思わず、口を挟んだ。風奏と、離れ離れになるのが怖くて、認めたくなくて、素直になれなかった。
前々から、覚悟はしてたけど、、でも、いざとなったら、怖くなった。
俺は、風奏になにかしてあげられたかなって、後悔の波が押し寄せてきた。
綺麗な音を奏でる、いつも明るい、病気にも、強く挑んだ俺の大好きな、女の子。風奏が、いなくなったら、、って思ったら本当に怖くなった。風奏のいない世界なんて、、嫌だった。
「うんん。ひとつだけ、わがまま言うね。私が、いなくなっても、歌は、歌い続けて。私の最後のお願い。辛くても、悲しくても、歌い続けて。もしも、もしもだけど、歌手を辞めちゃったとしても、歌は歌い続けて。ずっと、私は聴き続けたいから。千絃の歌が、大好きだから。千絃が、私の音は、希望だって、言ってくれたでしょ?同じように、千絃の音は、私に、希望をくれた。そして、これからも、希望や幸せを与え続けてほしい。だから、千絃の歌を奏で続けて。」
「おう、、。風奏に、聴こえるように、歌う。」
「約束だよ。大好きだよ。、、でも、私のこと、忘れていいんだよ?他に優しい人がいたら、その人を好きになってもいいからね?」
「は?やっぱ、お前、馬鹿だな。俺は、一生風奏の彼氏だ。一生、風奏のことが大好きな、藍川千絃だ。だから、そんなこと言うな。一生俺のこと好きでいろ。」
「うん。ありがと。」
「おう!」
「大好き、、。」
俺らの目は涙でいっぱいだった。でも、全員が笑顔だった。風奏が最期まで、弱音を吐かずに、笑顔で俺たちと接してくれたからだよな。
それから、風奏は、自分の人生を全うし、空の彼方へ旅立った。
風奏が、いなくなって、何度も、何度も、挫けそうになった。心が空っぽになった。なんで生きてるんだろうって思ったこともある。
でも、風奏の笑顔が、俺を前に向かせてくれた。
風奏の残してくれた、言葉が支えになった。
風奏との約束が力になった。
歌を歌うことで生きていく力が湧いた。
歌を、歌えば、風奏がそばで聴いてくれていると思えたから。
でも、風奏がいないって思いたくなくて、風奏への歌を歌ってこなかった。
だけど、やっと歌う、決心がついた。
そして、葛木と一緒に、歌詞を考えた。姫路や、げん、山科とも、詩を考えた。そして、りちと一緒に、作曲した。風奏との、思い出の詰まった、みんなで風奏に送る、歌、だ。
曲名は、『君に送る希望歌(レクイエム)』
風奏が、音を、希望に変えてくれたから、希望歌で、君に送るレクイエムと読ませた。
鎮魂歌なんて、嫌だったからな。悲しいより、希望が詰まった、あたたかい曲の方が風奏は喜んでくれるだろうって思ったんだ。笑顔で、明るい風奏にはこっちの方がお似合いだ。
風奏との約束
“風奏のために、風奏に聴こえるように、歌は一生歌い続ける”
を、守りたい。
そして風奏に、俺の歌をたくさん届けたい。
だから、俺は奏で続ける、君への希望歌(レクイエム)を。
最後に、お別れが嫌で、強がって、風奏に言えなかったことを言います。
俺と、出会ってくれて、ありがとう。
俺を、助けてくれて、ありがとう。
俺を、大好きになってくれてありがとう。
大好きな風奏へ、この思いが届きますように。
敬具
藍川千絃