「そっか、家族と、仲直り?っていうのかな?和解?かな、まぁいいや。できて、本当に、よかったな!」
弦矢が自分のことのように喜んでいた。
「うん、見捨てられてなんか、いなかった。ずっと、見守っていて、くれてた。嬉しかった。」
「よかったよ。嬉しそうにしてる、妃詩が見れて。」
弦矢の表情がいきなり固くなった。
「ど、どうしたの?」
妃詩も自然と表情が固くなった。
「妃詩に、伝えたいことがあって。」
真剣な眼差しを妃詩に向けた。
「うん、、。」
「俺さ、、作家になる。」
「うん、、。」
「作家に、なる。」
弦矢は目を輝かせ、明日の方向を見ている。
「うん?、、なるつもりじゃなかったの?」
妃詩は首を傾げた。
「え?俺、確かに小説は書いてるけどさ、別に、作家になろうと思って書いてたわけじゃない。趣味で書いてただけなんだ。ほら、直樹さんみたいな。」
しれっと言った。
「え?!そうだったんだ!」
驚き、自分が思ったより大声が出た。
「うん。妃詩のために、本を書いて、改めて思ったんだ。人を、助けられるような、人を感動させられるような、物語を、もっと書きたいって。もっとたくさんの人に、俺の物語を知ってもらいたいって。」
「そっか、、弦矢なら、できると思うよ。」
「そうか?でも、まだまだだぜ。俺。」
「なに言ってるの?私の方がまだまだだよ。確かに、ちづくんに音をつけてもらって、ちゃんとした歌になったよ。りちくんにも、演奏してもらって、ちゃんとした音楽にもなったよ。でも、まだ、それで、人の心を掴んで、あたためるような詩、描けてない。」
妃詩は目を伏せた。
「俺は、妃詩の詩に心をあたためてもらってるけど、、。」
「え?」
驚いて顔を上げる。
「俺は、妃詩に心をあたためてもらってるって言ったんだよ。そんなに自分のこと低評価するな。紗楽も言ってたろ?妃詩の詩に、救われたって。俺も、妃詩の詩、大好きだぜ。」
ニヤっと妃詩を見て笑った。
「なに、それ、、。」
弦矢から目を背けて、つぶやいた。
「あ、そうだ。新しい物語書いてるんだ。ちづと風奏ちゃんをモデルにした話。まぁ、モデルって言ったって、妃詩の物語同様、ノンフィクションだけどな。」
微笑みながら弦矢は楽しそうに言った。
「へぇ、、読みたい!」
弦矢の新しい物語。そう聞いただけでワクワクする妃詩だった。
「うん、本になったら読んで。時間はかかると思うけど。俺、人を助けられるような、そんな作家になりたい。いや、なってみせるからさ。」
自分の未来の姿を見つけたように明るく言った。
「待ってる。」
妃詩も微笑んだ。
「私もいつか、作詞家になる。私の詩で、みんなを救う。これが、私の生きる意味、、。やっと、見つけた。それを、教えてくれたのは、弦矢だよ。ありがとう。」
妃詩も夢を口にした。
弦矢は驚いたように目を見開いたあと、
「そんな、妃詩のこと、俺は大好きだよ。」
そう言った。
妃詩の顔が真っ赤になった。
「、、ずっと、そばにいてね。」
妃詩は弦矢にまっすぐ目を向けてそう言った。
弦矢も、夕日のように真っ赤になった。
そんな2人を真っ赤な太陽が照らしていた。