翌週末。
改めて風奏と会うことになった。
今度は弦矢や紗楽も一緒だ。
風奏も友達の英子や律、そして千絃を連れてきていた。
風奏と妃詩が仲直り、をした、あのカフェで、集まった。
お互い、彼らを紹介し合ったあと、またいろいろな話をした。
「妃詩って呼ぶね。」
英子が言った。
「あの、よかったら、ヒナで、いいよ。」
「ほ、ホントに?風奏だけかなぁとか、勝手に思ってたんだけど。」
「いいよ。英子にも呼んで欲しいなって思って。紗楽は勝手にヒナちゃんって呼んでるし。」
「勝手にってなに?」
「実際そうでしょ?」
「まぁ、たしかに。」
少女が歯を見せて笑い出した。
それにつられてみんなも笑い出す。
笑いが絶えない席になった。
最初こそみんな緊張していたようだったが、すぐに打ち解けた。
「風奏、今日は、ありがとう。」
「うんん。みんなと仲良くなれて良かった。私ね、ヒナの、架け橋になりたいって思ったの。夢を、壊しちゃったから、埋め合わせっていうか、、。」
「そんな」
「うん、わかってる。けど、みんな、いい人たちだから、つながって欲しかったんだよね。」
にっこりと笑みを浮かべた。
妃詩が大好きな笑顔だった。
「ありがとう。」
妃詩も微笑んだ。
「ごめん、みんな!実は今からちょっと用事入ってて、先に抜けます!ほんとごめんね。」
と紗楽が席を立った。
「あ!もしかして、この前言ってたラッパーくん?」
「へ?ま、まぁ。そうだよ?」
紗楽があからさまに動揺をあらわにした。
「え?なになに?彼氏?どんな子?」
英子が食いつく。
「え、英子ちゃん、、。また紹介するって。」
「うん!教えて教えて!」
実は、妃詩は知っていた。
ラップが得意な同級生だ。普段は普通に高校生をしている。ちなみに、妃詩たちと同じ学校。今日はそのラップの大会の日だった。それを紗楽は見に行くのだ。
「じゃ、また!」
と嬉しそうに歯を見せて笑いながら、紗楽は去っていった。
「おい、葛木。お前、詩、描けんのか?見せてくれねぇか?」
唐突に千絃が言った。
「え?なんで?」
「げんから聞いた。」
「弦矢、、あんた、、。」
睨みつける妃詩。
「別にいいじゃん。うまいんだし。りちもみたいよな?」
「おう、俺も見たい!」
「だろ?」
と悪びれもなく微笑んでいる。
男子3人はそれぞれ、ちづ、げん、りち、ともうあだ名で呼び合っている。
「歌詞、描いてくんねぇか。俺が音をつけるからさ。」
「音?」
首を傾げ訊く。
「あぁ。俺、歌手なんだけどよ。また新曲描こうと思ってるんだ。歌詞、描いてくれないか。実は俺、歌詞書くの苦手なんだ。」
「え、、?」
歌詞を描いてみたいと、思っていた妃詩にいきなり依頼がきた。
「妃詩、よかったじゃん。」
「う、、うん。、、やります。やらせてください。」
「じゃ、決まりだな。」
そのあと、妃詩は、千絃と律がバンドを組んでいて、デビューしていたことを知った。
「え!?そうだったの?ごめんなさい、知らなかった。」
「紗楽は会ってすぐ、サインくださいってもらいにきてたけどね。」
と英子がニヤニヤしながら言う。
「、、私、ルイスしか聴いてないからさ。」
苦しく言い訳をする。
「そっか、風奏が言ってたな。友達とルイスのライブ行ったって。」
「千絃、よく覚えてたね。」
「あ?伊達に彼氏やってねぇよ。」
明るくて、楽しい集まりだった。
夕刻が近づき、解散する時になった。
「ホントに、ありがとう。また、会おうね。」
「ヒナもありがと。わざわざ来てもらっちゃって悪いけど。」
口々に別れの言葉を言う。
妃詩はみんなに手を振り続けた。
「弦矢、ありがとう。私を、文学の世界に連れていってくれて。」
「え?」
「私が、詩を描きたいって思ったのは弦矢のおかげだし、なんていうか、、。」
「よかった!妃詩が、明るくなって。いつも下向いてばっかで、全然笑わなかったのに、照れたり、微笑んだり、してくれるようになった。笑ってる時の方が絶対いいよ。」
「全然、私、笑ってなかった?」
「うん。ずっとむすーってしてて、ずっと気が強いオーラが出てた。」
「ご、ごめん。」
「急に謝るようになったし。」
「え?!私ってあやまってなかったっけ?」
「うん。」
躊躇なく頷く。
「ごめん、、。」
「それがいいんじゃねぇの?妃詩らしいっていうか。でも、今の方が絶対可愛い。」
「は?!な、、なに言ってんの?」
「そんな、成長した妃詩さんに、どうぞ。」
といきなり鞄からノートを取り出した。
「なに?」
「、、妃詩を救う物語。」
「え!?できたの?」
目を輝かせて、ノートを受け取った。
「うん、、。」
「読んでもいい?」
「うん、、。」
せっかくだからと妃詩は川原に行った。
川原に腰掛け、ノートに描かれた文字を手でなぞった。
「葛木妃詩は、高校への道を歩いていた、、。これって、私の話?」
「うん。俺、妃詩が成長する自分の姿の小説を見たら、生きる力が湧くかなって思ったんだ。物語っていうかノンフィクションだけど。書き始めたら、止まらなくてさ。すぐ書き終えた。それで、はやく読んでもらいたくて。」
「そうなんだ。」
たしかに、その方が自分の話だって思って読みやすいかも、、。そういえば、最近弦矢が色々なこと訊いてきてたな、、。このためだったんだ。
妃詩はこの物語のできる裏側を想像して微笑んだ。
しばらく物語に集中した。
読み進めるうちにどんどん、物語が入ってくるような気がした。
心に言葉一つ一つが刻まれる。弦矢が、紡いだ優しい言葉の数々に、妃詩は自然と涙を流していた。
水面が光り輝いていた。妃詩を励ますように。これからの道を照らすように。の一行で物語は締められていた。
「ありがとう。、、私のために、ありがとう。」
弦矢に笑顔を向けた。
「っ!!、、よかった、、。よかったぁ〜、、。」
弦矢は驚いたように目を見開いたあと、目を細めた。
目の淵に涙が光っている。
「笑ってくれて、よかった。俺、これを読んだあと、妃詩が笑ってくれたらって思って、物語書いたんだ。本当に、よかった。」
弦矢の嬉しそうな声につられて、涙がまた溢れてきた。
「新たな一歩だな。」
笑顔を向ける。
「うん。」
涙を流しながら、頷いた。
「ありがとう。弦矢。」
1ヶ月が経った。
今日は、詩を見せる日だった。
風奏の家の近くの公園に風奏、妃詩、律、そして千絃の4人が集まった。
歌詞用の詩以外にも、妃詩は詩を描いていた。
弦矢に勧められ、文芸部の文集に詩集を載せてもらったのだ。ただし、文芸部には入ってはいないが。
ちなみに、文芸部は、1年生の女の子2人が入ってくれたので、細々と存続している。
「葛木、歌詞、描いてくれた?」
「あ、うん、これ。」
妃詩は千絃に詩を見せた。
「、、いいんじゃね?」
「うん、、いいと思う。」
千絃と律が褒めた。
「じゃ、ちょっと、音にしてみますか!」
「あぁ!」
律がギターを手に取った。
「すごいね!ヒナ!」
満面の笑みで風奏が褒める。
「あのさ、風奏、、私、風奏に憧れて、音楽の世界に入ったんだ。」
下を向いて、ぽつりとつぶやいた。
「え?」
「風奏の、ピアノに憧れて、音楽に興味持って、ルイスが好きになったし、詩も好きになった。ありがとね、風奏。」
「ヒナ、、。そうだったんだ!私の、おかげってことだよね?それは嬉しいなぁ。」
「うん。風奏のおかげ。」
妃詩の言葉に興奮する風奏を笑顔で眺めた。
「しかも、千絃と村雨くんの歌詞担当になるんだよね?嬉しいな、、。」
笑顔でつぶやいた。本当に嬉しそうに、でも、何故か、少し悲しそうな笑みだった。
「風奏、、?」
「よし!できた!」
どうしたの?と訊こうとしたが、千絃の大きな声でかき消されてしまった。
「聴きたいな〜!」
楽しそうにねだる風奏。
「特別に、、。」
ニヤリと千絃は笑うと、律のギターが鳴った。
千絃の優しい歌声が聴こえた。サビになるにつれ、力強くなっていく。
歌声に包まれていくような感覚になった。
妃詩の詩が、歌に、音楽になった瞬間だった。
詩が、音を持った。それも、とても、綺麗な、音をもった。
とてつもなく、嬉しくなった妃詩だった。
すごい、、。それに、、本当に、歌になった。
千絃の歌声と、律のギターに感激しながら妃詩はそう思った。
「ヒナ、、。いい歌詞だね。」
風奏も、すごい、と呆気に取られながら言った。
「みんなの、心を、救えたらいいけど、、。」
「大丈夫!ヒナなら、大丈夫!」
元気に励ます。
「でも、、。」
「大丈夫だよ。ヒナ。ヒナの夢は、、なに?」
「私の、、夢?」
「うん、今度こそ、本当の夢、教えて。」
涙目になりながら、風奏が訊いた。
「私、、私の、夢は、、。風奏みたいに、音楽で、人を救えるような人に、なること。歌詞で、みんなを救えるような作詞家に、なりたい。」
「やっと、言えたね、、。」
えらいえらいというように、風奏は妃詩の頭を撫でた。
途端に2人の頬に、涙が伝った。
「応援してるよ。ヒナ、、。私が、応援してるから、大丈夫だよ?」
優しく、風奏の言葉が妃詩の心を包んだ。
この時は、まだ、妃詩は知らなかった。
永遠に続いて欲しかった時間に、いつかは終わりが来ると。
本当の別れが待っている、ということを。
でも、、永遠に、続いて欲しかった。
幸せな、時間が永遠に。
改めて風奏と会うことになった。
今度は弦矢や紗楽も一緒だ。
風奏も友達の英子や律、そして千絃を連れてきていた。
風奏と妃詩が仲直り、をした、あのカフェで、集まった。
お互い、彼らを紹介し合ったあと、またいろいろな話をした。
「妃詩って呼ぶね。」
英子が言った。
「あの、よかったら、ヒナで、いいよ。」
「ほ、ホントに?風奏だけかなぁとか、勝手に思ってたんだけど。」
「いいよ。英子にも呼んで欲しいなって思って。紗楽は勝手にヒナちゃんって呼んでるし。」
「勝手にってなに?」
「実際そうでしょ?」
「まぁ、たしかに。」
少女が歯を見せて笑い出した。
それにつられてみんなも笑い出す。
笑いが絶えない席になった。
最初こそみんな緊張していたようだったが、すぐに打ち解けた。
「風奏、今日は、ありがとう。」
「うんん。みんなと仲良くなれて良かった。私ね、ヒナの、架け橋になりたいって思ったの。夢を、壊しちゃったから、埋め合わせっていうか、、。」
「そんな」
「うん、わかってる。けど、みんな、いい人たちだから、つながって欲しかったんだよね。」
にっこりと笑みを浮かべた。
妃詩が大好きな笑顔だった。
「ありがとう。」
妃詩も微笑んだ。
「ごめん、みんな!実は今からちょっと用事入ってて、先に抜けます!ほんとごめんね。」
と紗楽が席を立った。
「あ!もしかして、この前言ってたラッパーくん?」
「へ?ま、まぁ。そうだよ?」
紗楽があからさまに動揺をあらわにした。
「え?なになに?彼氏?どんな子?」
英子が食いつく。
「え、英子ちゃん、、。また紹介するって。」
「うん!教えて教えて!」
実は、妃詩は知っていた。
ラップが得意な同級生だ。普段は普通に高校生をしている。ちなみに、妃詩たちと同じ学校。今日はそのラップの大会の日だった。それを紗楽は見に行くのだ。
「じゃ、また!」
と嬉しそうに歯を見せて笑いながら、紗楽は去っていった。
「おい、葛木。お前、詩、描けんのか?見せてくれねぇか?」
唐突に千絃が言った。
「え?なんで?」
「げんから聞いた。」
「弦矢、、あんた、、。」
睨みつける妃詩。
「別にいいじゃん。うまいんだし。りちもみたいよな?」
「おう、俺も見たい!」
「だろ?」
と悪びれもなく微笑んでいる。
男子3人はそれぞれ、ちづ、げん、りち、ともうあだ名で呼び合っている。
「歌詞、描いてくんねぇか。俺が音をつけるからさ。」
「音?」
首を傾げ訊く。
「あぁ。俺、歌手なんだけどよ。また新曲描こうと思ってるんだ。歌詞、描いてくれないか。実は俺、歌詞書くの苦手なんだ。」
「え、、?」
歌詞を描いてみたいと、思っていた妃詩にいきなり依頼がきた。
「妃詩、よかったじゃん。」
「う、、うん。、、やります。やらせてください。」
「じゃ、決まりだな。」
そのあと、妃詩は、千絃と律がバンドを組んでいて、デビューしていたことを知った。
「え!?そうだったの?ごめんなさい、知らなかった。」
「紗楽は会ってすぐ、サインくださいってもらいにきてたけどね。」
と英子がニヤニヤしながら言う。
「、、私、ルイスしか聴いてないからさ。」
苦しく言い訳をする。
「そっか、風奏が言ってたな。友達とルイスのライブ行ったって。」
「千絃、よく覚えてたね。」
「あ?伊達に彼氏やってねぇよ。」
明るくて、楽しい集まりだった。
夕刻が近づき、解散する時になった。
「ホントに、ありがとう。また、会おうね。」
「ヒナもありがと。わざわざ来てもらっちゃって悪いけど。」
口々に別れの言葉を言う。
妃詩はみんなに手を振り続けた。
「弦矢、ありがとう。私を、文学の世界に連れていってくれて。」
「え?」
「私が、詩を描きたいって思ったのは弦矢のおかげだし、なんていうか、、。」
「よかった!妃詩が、明るくなって。いつも下向いてばっかで、全然笑わなかったのに、照れたり、微笑んだり、してくれるようになった。笑ってる時の方が絶対いいよ。」
「全然、私、笑ってなかった?」
「うん。ずっとむすーってしてて、ずっと気が強いオーラが出てた。」
「ご、ごめん。」
「急に謝るようになったし。」
「え?!私ってあやまってなかったっけ?」
「うん。」
躊躇なく頷く。
「ごめん、、。」
「それがいいんじゃねぇの?妃詩らしいっていうか。でも、今の方が絶対可愛い。」
「は?!な、、なに言ってんの?」
「そんな、成長した妃詩さんに、どうぞ。」
といきなり鞄からノートを取り出した。
「なに?」
「、、妃詩を救う物語。」
「え!?できたの?」
目を輝かせて、ノートを受け取った。
「うん、、。」
「読んでもいい?」
「うん、、。」
せっかくだからと妃詩は川原に行った。
川原に腰掛け、ノートに描かれた文字を手でなぞった。
「葛木妃詩は、高校への道を歩いていた、、。これって、私の話?」
「うん。俺、妃詩が成長する自分の姿の小説を見たら、生きる力が湧くかなって思ったんだ。物語っていうかノンフィクションだけど。書き始めたら、止まらなくてさ。すぐ書き終えた。それで、はやく読んでもらいたくて。」
「そうなんだ。」
たしかに、その方が自分の話だって思って読みやすいかも、、。そういえば、最近弦矢が色々なこと訊いてきてたな、、。このためだったんだ。
妃詩はこの物語のできる裏側を想像して微笑んだ。
しばらく物語に集中した。
読み進めるうちにどんどん、物語が入ってくるような気がした。
心に言葉一つ一つが刻まれる。弦矢が、紡いだ優しい言葉の数々に、妃詩は自然と涙を流していた。
水面が光り輝いていた。妃詩を励ますように。これからの道を照らすように。の一行で物語は締められていた。
「ありがとう。、、私のために、ありがとう。」
弦矢に笑顔を向けた。
「っ!!、、よかった、、。よかったぁ〜、、。」
弦矢は驚いたように目を見開いたあと、目を細めた。
目の淵に涙が光っている。
「笑ってくれて、よかった。俺、これを読んだあと、妃詩が笑ってくれたらって思って、物語書いたんだ。本当に、よかった。」
弦矢の嬉しそうな声につられて、涙がまた溢れてきた。
「新たな一歩だな。」
笑顔を向ける。
「うん。」
涙を流しながら、頷いた。
「ありがとう。弦矢。」
1ヶ月が経った。
今日は、詩を見せる日だった。
風奏の家の近くの公園に風奏、妃詩、律、そして千絃の4人が集まった。
歌詞用の詩以外にも、妃詩は詩を描いていた。
弦矢に勧められ、文芸部の文集に詩集を載せてもらったのだ。ただし、文芸部には入ってはいないが。
ちなみに、文芸部は、1年生の女の子2人が入ってくれたので、細々と存続している。
「葛木、歌詞、描いてくれた?」
「あ、うん、これ。」
妃詩は千絃に詩を見せた。
「、、いいんじゃね?」
「うん、、いいと思う。」
千絃と律が褒めた。
「じゃ、ちょっと、音にしてみますか!」
「あぁ!」
律がギターを手に取った。
「すごいね!ヒナ!」
満面の笑みで風奏が褒める。
「あのさ、風奏、、私、風奏に憧れて、音楽の世界に入ったんだ。」
下を向いて、ぽつりとつぶやいた。
「え?」
「風奏の、ピアノに憧れて、音楽に興味持って、ルイスが好きになったし、詩も好きになった。ありがとね、風奏。」
「ヒナ、、。そうだったんだ!私の、おかげってことだよね?それは嬉しいなぁ。」
「うん。風奏のおかげ。」
妃詩の言葉に興奮する風奏を笑顔で眺めた。
「しかも、千絃と村雨くんの歌詞担当になるんだよね?嬉しいな、、。」
笑顔でつぶやいた。本当に嬉しそうに、でも、何故か、少し悲しそうな笑みだった。
「風奏、、?」
「よし!できた!」
どうしたの?と訊こうとしたが、千絃の大きな声でかき消されてしまった。
「聴きたいな〜!」
楽しそうにねだる風奏。
「特別に、、。」
ニヤリと千絃は笑うと、律のギターが鳴った。
千絃の優しい歌声が聴こえた。サビになるにつれ、力強くなっていく。
歌声に包まれていくような感覚になった。
妃詩の詩が、歌に、音楽になった瞬間だった。
詩が、音を持った。それも、とても、綺麗な、音をもった。
とてつもなく、嬉しくなった妃詩だった。
すごい、、。それに、、本当に、歌になった。
千絃の歌声と、律のギターに感激しながら妃詩はそう思った。
「ヒナ、、。いい歌詞だね。」
風奏も、すごい、と呆気に取られながら言った。
「みんなの、心を、救えたらいいけど、、。」
「大丈夫!ヒナなら、大丈夫!」
元気に励ます。
「でも、、。」
「大丈夫だよ。ヒナ。ヒナの夢は、、なに?」
「私の、、夢?」
「うん、今度こそ、本当の夢、教えて。」
涙目になりながら、風奏が訊いた。
「私、、私の、夢は、、。風奏みたいに、音楽で、人を救えるような人に、なること。歌詞で、みんなを救えるような作詞家に、なりたい。」
「やっと、言えたね、、。」
えらいえらいというように、風奏は妃詩の頭を撫でた。
途端に2人の頬に、涙が伝った。
「応援してるよ。ヒナ、、。私が、応援してるから、大丈夫だよ?」
優しく、風奏の言葉が妃詩の心を包んだ。
この時は、まだ、妃詩は知らなかった。
永遠に続いて欲しかった時間に、いつかは終わりが来ると。
本当の別れが待っている、ということを。
でも、、永遠に、続いて欲しかった。
幸せな、時間が永遠に。