家に帰ると、置き手紙があった。
〔夜ご飯は適当に作っておいてください。9時には帰る。 父〕とあった。
なんでもっと早く言わないの?学校で、スマホを使ったら没収されるから、音が鳴らないように気を使って書き置きをしてくれてるのは、わかる。けど、こういうのはもっと早く言ってよ!
内心父親に毒づいた。
「冷蔵庫にはいろいろあるから、、なんとかはなるか。」
と呟き、冷蔵庫の扉をバンッと勢いよく閉めた。
行き場のない怒りを抱きながら手早く晩御飯を作った。
そして1人で食べた。
父親の分はラップを被せ、冷蔵庫に入れる。
そしてメモ用紙に走り書きする。
〔次からはもっと早く言ってください。冷蔵庫に適当に作ったご飯入ってます。 妃詩〕
こんなふうに会話するようになったのはいつからだろう、、。いつもは何時に帰ります。とか一言だけだったのに、、。
この置き手紙のやり取りで、妃詩と父親の関係が繋がっている。
父親が仕事で忙しいのはわかっている。夜遅くに帰ってきて、妃詩が家を出るくらいに起きてくる。でも、家事ももう少し手伝って欲しい。が、わがままは言えない。
妃詩はわかっているから。
父親と母親が別れたキッカケは、妃詩自身にあることを知っているから。
あることがキッカケで、夫婦仲が悪くなった。
いや、母親が壊れた。
『こんな子、私の子じゃない!』
『そんな子に育てた覚えはない!』
『私にせいじゃない!この子が全部悪い。狂ってるの!』
散々妃詩に暴言を吐いたあと、父親にあたった。
『あなたが家事を手伝ってくれないからよ!』
『仕事ばっかり、しているからよ!』
『あなたが悪い。あなたのせいでこの子は狂ったの!』
妃詩は、自分自身が全て悪いのに、父親のせいにされるのが嫌だった。そして、母親が自分のせいじゃないとわんわん喚くのが許せなかった。
『もう、限界よ、、。』
その一言で、妃詩の心は、爆発した。
『私自身のせいなのに、なんでお父さんのせいにするの?意味わかんない、、。私が悪いってわかってるよ。そんなに叫ばなくても、私、知ってるよ!自分が狂ってること!でも、、こうしないと、生きられなかったの!こうしないと、、。もう、、限界だったの!』
一度開いた口は、もう止まることはなかった。
『あなたが言う、限界より、、もっと、もっと、耐えられない限界だったの!でも、、今は、あなたのことが、限界。私は、なんでも他人のせいにして、なんでも、お父さんに押し付ける。自分はなにも悪くないって思ってる。そう言うところが嫌い!もう、大っ嫌い!』
と言い残し、2人をおいて部屋を出た。
力が抜けたように、部屋の前の階段に腰を下ろした。自分の部屋へ上がる気力はなく、そのまま息を潜め、聞き耳をたてていた。
その途端、母親がまたワンワン喚き出した。さらには、まだ父親のせいだと言い張った。
今まで黙っていた父親だったが、今回ばかりは、父親も耐えられなかったようで、父親は母親に反論した。
すると、母親の声が震え出し、泣き声がした。
そして、泣き声の隙間から、
『別れましょう、、。』
と呟いたのが聴こえた。
それから、父親と母親は離婚し、妃詩は父親の元に行った。苗字が変わることはなかったが、住居は変わった。父親の実家に移ったからだ。実家といっても、高速を使って1時間ほどの場所だが。
父親の母親。つまり、妃詩の祖母が介護施設にいて、できるだけそばにいてあげたいと父親は言っていた。
祖母は、もう長くないと宣告されたようだった。
妃詩が中学に入学した頃から、闘病中で、病気が進んできているらしい。ちなみに祖父は、妃詩が生まれてすぐに亡くなっている。
だが、父親は、妃詩に、もう一度やり直して欲しいという願いを持ち、転居してくれたのではないか。そう妃詩は思っている。
しかし、その願いは虚しく、1人の同級生によって、壊された。
妃詩がいた町より、結構遠いところの高校を受験したのに、そこまで進学する猛者がいたから。
妃詩は、これから家族関係も、やり直すつもりだった。
だけど、母親にとった態度が、尾を引いて、父親にも避けられている。今にも爆発しそうな爆弾を、刺激しないようにそっとしている。そして、いつ爆発してもいいように覚悟している。そんな感じだと妃詩は思った。
だから、妃詩のことを刺激しないようにするため、家族の関係が、置き手紙でつながる関係になってしまったのだった。
──元凶は、、私だ。だから、、。
でも、これ以上迷惑をかけないように、いなくなることはできない。だって、、。
──だって私は、、一度消えようとしたから。
知らぬ間に、熱いものが頬を伝っていった。
妃詩は布団を頭からかぶって目を閉じた。
嫌なことから、、目を逸らすように、、。
〔夜ご飯は適当に作っておいてください。9時には帰る。 父〕とあった。
なんでもっと早く言わないの?学校で、スマホを使ったら没収されるから、音が鳴らないように気を使って書き置きをしてくれてるのは、わかる。けど、こういうのはもっと早く言ってよ!
内心父親に毒づいた。
「冷蔵庫にはいろいろあるから、、なんとかはなるか。」
と呟き、冷蔵庫の扉をバンッと勢いよく閉めた。
行き場のない怒りを抱きながら手早く晩御飯を作った。
そして1人で食べた。
父親の分はラップを被せ、冷蔵庫に入れる。
そしてメモ用紙に走り書きする。
〔次からはもっと早く言ってください。冷蔵庫に適当に作ったご飯入ってます。 妃詩〕
こんなふうに会話するようになったのはいつからだろう、、。いつもは何時に帰ります。とか一言だけだったのに、、。
この置き手紙のやり取りで、妃詩と父親の関係が繋がっている。
父親が仕事で忙しいのはわかっている。夜遅くに帰ってきて、妃詩が家を出るくらいに起きてくる。でも、家事ももう少し手伝って欲しい。が、わがままは言えない。
妃詩はわかっているから。
父親と母親が別れたキッカケは、妃詩自身にあることを知っているから。
あることがキッカケで、夫婦仲が悪くなった。
いや、母親が壊れた。
『こんな子、私の子じゃない!』
『そんな子に育てた覚えはない!』
『私にせいじゃない!この子が全部悪い。狂ってるの!』
散々妃詩に暴言を吐いたあと、父親にあたった。
『あなたが家事を手伝ってくれないからよ!』
『仕事ばっかり、しているからよ!』
『あなたが悪い。あなたのせいでこの子は狂ったの!』
妃詩は、自分自身が全て悪いのに、父親のせいにされるのが嫌だった。そして、母親が自分のせいじゃないとわんわん喚くのが許せなかった。
『もう、限界よ、、。』
その一言で、妃詩の心は、爆発した。
『私自身のせいなのに、なんでお父さんのせいにするの?意味わかんない、、。私が悪いってわかってるよ。そんなに叫ばなくても、私、知ってるよ!自分が狂ってること!でも、、こうしないと、生きられなかったの!こうしないと、、。もう、、限界だったの!』
一度開いた口は、もう止まることはなかった。
『あなたが言う、限界より、、もっと、もっと、耐えられない限界だったの!でも、、今は、あなたのことが、限界。私は、なんでも他人のせいにして、なんでも、お父さんに押し付ける。自分はなにも悪くないって思ってる。そう言うところが嫌い!もう、大っ嫌い!』
と言い残し、2人をおいて部屋を出た。
力が抜けたように、部屋の前の階段に腰を下ろした。自分の部屋へ上がる気力はなく、そのまま息を潜め、聞き耳をたてていた。
その途端、母親がまたワンワン喚き出した。さらには、まだ父親のせいだと言い張った。
今まで黙っていた父親だったが、今回ばかりは、父親も耐えられなかったようで、父親は母親に反論した。
すると、母親の声が震え出し、泣き声がした。
そして、泣き声の隙間から、
『別れましょう、、。』
と呟いたのが聴こえた。
それから、父親と母親は離婚し、妃詩は父親の元に行った。苗字が変わることはなかったが、住居は変わった。父親の実家に移ったからだ。実家といっても、高速を使って1時間ほどの場所だが。
父親の母親。つまり、妃詩の祖母が介護施設にいて、できるだけそばにいてあげたいと父親は言っていた。
祖母は、もう長くないと宣告されたようだった。
妃詩が中学に入学した頃から、闘病中で、病気が進んできているらしい。ちなみに祖父は、妃詩が生まれてすぐに亡くなっている。
だが、父親は、妃詩に、もう一度やり直して欲しいという願いを持ち、転居してくれたのではないか。そう妃詩は思っている。
しかし、その願いは虚しく、1人の同級生によって、壊された。
妃詩がいた町より、結構遠いところの高校を受験したのに、そこまで進学する猛者がいたから。
妃詩は、これから家族関係も、やり直すつもりだった。
だけど、母親にとった態度が、尾を引いて、父親にも避けられている。今にも爆発しそうな爆弾を、刺激しないようにそっとしている。そして、いつ爆発してもいいように覚悟している。そんな感じだと妃詩は思った。
だから、妃詩のことを刺激しないようにするため、家族の関係が、置き手紙でつながる関係になってしまったのだった。
──元凶は、、私だ。だから、、。
でも、これ以上迷惑をかけないように、いなくなることはできない。だって、、。
──だって私は、、一度消えようとしたから。
知らぬ間に、熱いものが頬を伝っていった。
妃詩は布団を頭からかぶって目を閉じた。
嫌なことから、、目を逸らすように、、。