幼い頃から家が隣で、お互いの部屋も隣り合わせで、ベランダからベランダへの移動が物凄く簡単な為に、いつもあいつが来る時は窓からで。私の部屋は、いつでもあいつが来ていいようにと、鍵は開けてあるから、もしも家に泥棒が入ったとして、侵入ルートはどこだと警察が捜索した時に、真っ先に私の部屋の窓が疑われるくらいにはセキュリティが甘い。

 そんな幼馴染は現実では滅多にあり得ない。日本中、いや、世界中を探しても、幼馴染がいてもそんな間柄の人たちがいる確率は物凄く低いと思われる。でも、漫画やドラマではよくあるパターンだ。そして、女の子なら誰でも憧れるパターンだ。しかし、その幼馴染との恋が叶う場合に限る。

 私には、幼馴染(仮)みたいな男の子はいる。家も近くないし、幼稚園も違う。小学校から高校まで一緒の学校に通っている人と言うだけ。ただ、私たち二人は同じ私立の中学を受験して中学生になった。同小学校からは私たち二人だけで、それがきっかけで仲良くなった。親同士も受験がきっかけでママ友になった。だから、「昔から知っている奴」が彼しかいない。幼馴染(仮)だ。

 あいつがどんな人か説明するのは正直照れ臭い。「昔から知っててさ、幼馴染みたいな感じなんだよね」と、関係値だけの説明で終わらせられるほど、私はあいつをなんとも思っていないわけではないからだ。でもそれは不思議と認めたくないもので、自分の気持ちに気がつくのには何年もかかってしまった。

 今あいつがどんな人かと聞かれたら、私はこう答えると思う。

 「太陽みたいな人」だって。

 自分から出ている光で、周りを輝かしてくれる、そんな人だと。
 勉強は得意ではないけどスポーツは何でもできる。好きな教科は何だと聞くと、即答で「体育」と返答が来る。クラスの中でもいつも中心にいるタイプで、応援団とかも率先してやってしまうタイプ。あいつが笑うとみんなも笑う。あいつに元気がないとみんなにも雨の日のようなどんよりとした空気が流れる。…まるで太陽だな。あいつを見ていてそう思った時くらいから、もしかしたら私のこの気持ちは始まっていたのかもしれない。


 ここまで読んでくれたそこのあなたに、この先を読むにあたって誓ってほしいことがある。
 もし、私というヒロインを幸せにするヒーローがあいつじゃなくても、悪者にはしないと誓ってほしい。いつだってヒロインを苦しませるヒーローは簡単に敵になる。でもそれだけはやめてほしい。だって私は、あいつの幸せしか願っていないのだから。
そもそも、あいつがこの物語のヒーローだった場合、その相手のヒロインが、私だとは誰にも分からないのだから。