時代の移ろいと少しの衰えを感じさせるありふれた商店街があった。
その一角に友人を持つ少年がいた。
それはとても有名な企業の一人息子だった。

少年は出かける準備をしていた。
今日は幼馴染に呼び出されていたのだ。
少年の家から数十kmの距離を気にしないのは、使用人の送り迎えがあるためである。
しかし、待ち合わせには間に合わなそうだ。
10分くらいは遅れるだろう。
あいつは怒るだろうが、仕方ない。
少年は幼馴染の要求はだいたいなんでも快く受けていた。
他と別け隔てなく接してくれる人間は、幼馴染くらいしかいないのだ。
なぜなら、少年は超有名老舗企業の一人息子だからだ。

少年は写真が好きだった。
父に貰ったカメラが、一人にはなれないが、開放感がある外で撮った写真が好きだった。
心から純粋に、本当に大好きだった。
休日の静かな家。特別で幸せに見えた家族は、少年にとってはほんの少し歪だった。
使用人のノックと某高級車のアイドリングを合図に、少年の一日は始まる。

カメラ喫茶月宮。
この店に一台の高級車が向かっていった。