わたし、桃倉小春はいつどんなときだって、真剣に後悔のないように生きたいと思っている。
あの時こうしておけばよかったなどと言って、思い返すことのないように。今をしっかり笑っていられるように。
だから今日も、いつものように図書館の奥に見える大好きな背中にしがみついた。
「白ちゃーん! なぁーに読んでるの?」
溢れんばかりの朝の光を全身に浴びてキラキラ輝くその姿は、まるでこの世のものとは思えないほど美しく見える。
「も、桃倉…」
今日もいつもと同じく最高で最強といわんばかりの魅力的なテノールで、わたしの大好きな王子様、秋月白夜はわたしの名を呼んだ。ときめかずしてはいられない鋭い視線をわたしに向けて。
「おい、桃倉、いつもいつもいい加減にしろ……」
「白ちゃん、放課後、お茶でもしてかない?」
「してかない。てか俺のはなし、聞いてる?」
「聞きたくないよ。白ちゃん、いつも断るんだもん」
「あのなぁ……」
眉間にしわを寄せて白ちゃんは溜息をつく。
これもいつものこと。
毎日のように見ているから、もう慣れっこだ。
「今日、美術部もお休みでしょ。三時半に教室に迎えに行くね」
わたしは引かない。
そっちがその気なら、わたしだってその気にできるまでは絶対に引かない。
ここで諦めるはずがない。でも、
「お、おい。桃倉……」
たまに。
たまにだけど、迷惑そうな白ちゃんの表情に胸がちくっと痛むこともある。(いや、今に始まったことじゃないんだけど)
とはいえ、
『一日一日を大切にしたい!』
これがわたしのモットー。
いくら傷ついたって気にしない。
だって、今日という日は二度と戻らないのだから。わたしは自分が納得いくまで必死で彼を追い続ける。白ちゃんに一目惚れした、あの日から。ずっと。
そしてこれからも。
そう、時が許すかぎり。
「ねぇ、白ちゃぁ~ん♡」
きっと、白ちゃんは断れない。
わたしはそれを知っている。
どれだけ迷惑そうにしていたって、結局白ちゃんは優しいから、わたしのわがままに付き合ってくれる。
「なぁ、なんでそんなに俺にこだわるわけ? 桃倉にならもっといいヤツがいっぱいいるだろ。結構モテてるって聞くけど」
面倒くさそうに白ちゃんはを額に手を当てる。
「は、白ちゃん、気にしてくれてるの?」
「い、いや、だから…」
やだ、嬉しい!と盛大に喜んで見せる。
「わたしは白ちゃんが一番好きだから、ほかに興味はないの。白ちゃんだけでいいの!」
バカなことだってわかってる。
いつも白ちゃんを困らせてはへらへら笑ってみせる。でもこれがわたし。こうして自分に正直に生きていきたい。わたしが選んだわたしの生き方。
「いつまでこんなこと、繰り返すつもりだ」
今にも消えそうな声だった。
それでもたしかに、白ちゃんはそう呟いた。
何度も何度も断っても断ってもしつこくついてくる人間が迷惑なんだろうな。
そんなことは、わたしでもわかる。
「さてと、わたしは教室に戻るよ。また放課後ね」
すかさずいつものお得意の笑顔を作る。
かなり無神経に生きてるということは重々承知の上だったけど、本当は傷つくことのない人間になれたらいいのに。
そう思うときもある。
『いつまでこんなこと、繰り返す?』
後ろからそんな声が聞こえた気がしたけど、わたしは聞こえなかったふりをする。
永遠に続けるわ。
あなたの心にわたしの想いが通じるまで。ずっと…
そう言いたくても結局肝心な言葉は出てこなくて、わたしはそのまま白ちゃんに背を向けるしかなかった。
あの時こうしておけばよかったなどと言って、思い返すことのないように。今をしっかり笑っていられるように。
だから今日も、いつものように図書館の奥に見える大好きな背中にしがみついた。
「白ちゃーん! なぁーに読んでるの?」
溢れんばかりの朝の光を全身に浴びてキラキラ輝くその姿は、まるでこの世のものとは思えないほど美しく見える。
「も、桃倉…」
今日もいつもと同じく最高で最強といわんばかりの魅力的なテノールで、わたしの大好きな王子様、秋月白夜はわたしの名を呼んだ。ときめかずしてはいられない鋭い視線をわたしに向けて。
「おい、桃倉、いつもいつもいい加減にしろ……」
「白ちゃん、放課後、お茶でもしてかない?」
「してかない。てか俺のはなし、聞いてる?」
「聞きたくないよ。白ちゃん、いつも断るんだもん」
「あのなぁ……」
眉間にしわを寄せて白ちゃんは溜息をつく。
これもいつものこと。
毎日のように見ているから、もう慣れっこだ。
「今日、美術部もお休みでしょ。三時半に教室に迎えに行くね」
わたしは引かない。
そっちがその気なら、わたしだってその気にできるまでは絶対に引かない。
ここで諦めるはずがない。でも、
「お、おい。桃倉……」
たまに。
たまにだけど、迷惑そうな白ちゃんの表情に胸がちくっと痛むこともある。(いや、今に始まったことじゃないんだけど)
とはいえ、
『一日一日を大切にしたい!』
これがわたしのモットー。
いくら傷ついたって気にしない。
だって、今日という日は二度と戻らないのだから。わたしは自分が納得いくまで必死で彼を追い続ける。白ちゃんに一目惚れした、あの日から。ずっと。
そしてこれからも。
そう、時が許すかぎり。
「ねぇ、白ちゃぁ~ん♡」
きっと、白ちゃんは断れない。
わたしはそれを知っている。
どれだけ迷惑そうにしていたって、結局白ちゃんは優しいから、わたしのわがままに付き合ってくれる。
「なぁ、なんでそんなに俺にこだわるわけ? 桃倉にならもっといいヤツがいっぱいいるだろ。結構モテてるって聞くけど」
面倒くさそうに白ちゃんはを額に手を当てる。
「は、白ちゃん、気にしてくれてるの?」
「い、いや、だから…」
やだ、嬉しい!と盛大に喜んで見せる。
「わたしは白ちゃんが一番好きだから、ほかに興味はないの。白ちゃんだけでいいの!」
バカなことだってわかってる。
いつも白ちゃんを困らせてはへらへら笑ってみせる。でもこれがわたし。こうして自分に正直に生きていきたい。わたしが選んだわたしの生き方。
「いつまでこんなこと、繰り返すつもりだ」
今にも消えそうな声だった。
それでもたしかに、白ちゃんはそう呟いた。
何度も何度も断っても断ってもしつこくついてくる人間が迷惑なんだろうな。
そんなことは、わたしでもわかる。
「さてと、わたしは教室に戻るよ。また放課後ね」
すかさずいつものお得意の笑顔を作る。
かなり無神経に生きてるということは重々承知の上だったけど、本当は傷つくことのない人間になれたらいいのに。
そう思うときもある。
『いつまでこんなこと、繰り返す?』
後ろからそんな声が聞こえた気がしたけど、わたしは聞こえなかったふりをする。
永遠に続けるわ。
あなたの心にわたしの想いが通じるまで。ずっと…
そう言いたくても結局肝心な言葉は出てこなくて、わたしはそのまま白ちゃんに背を向けるしかなかった。