「メールで納得できるまで話し合ってみたら? 一度文章にすると意見を客観的に見れるようになる。送信する前に読み返せば、ちゃんと伝わるように言葉を選べるだろ?」
二人とも感情を隠せないタイプだから不満が顔と態度に出てしまう。だから、ケンカした時は直接会って話すよりはメールのほうがいい。どっちが何を言ったか記録に残るし、メッセージを打ってる間に冷静になれる。
「亜衣は迅堂くんが好きなんだろ?」
「うん」
「じゃあ仲直りしないとね」
「うー、でも……」
亜衣はまだ渋っていた。スマホ画面を睨みつけながら唇を尖らせている。すると、亜衣の手の中のスマホが震えた。
『さっきはごめん。悪かった』
迅堂くんから短い謝罪のメールが届き、亜衣が目を丸くした。
「瑠衣、さっきの話、晃にもしたの?」
「してないよ」
「だって、晃が自分から謝るなんて!」
スマホ画面を僕に見せながら、亜衣が嬉しそうに声を弾ませている。さっきまでの仏頂面が嘘みたいだ。
「それだけ迅堂くんは亜衣が大事なんだよ。口下手だけど、そういうトコ含めて好きなんだろ?」
「うんっ!」
素直に好きだと言える亜衣が羨ましい。僕と同じ顔なのに性格は真逆だ。喜怒哀楽を隠さない亜衣は家族の欲目を抜きにしても魅力的だと思う。
「見て見て。『さっき嫌な態度したから瑠衣にも謝っておいて』だって。自分で言えばいいのに」
「僕は気にしてないって返事しておいて」
「はいはーい」
迅堂くんはカッとなりやすいけど、自分に非があればきちんと認めて謝罪できる人だ。だからこそ亜衣も僕も彼に惹かれている。
「でも、すぐヤリたがるとこは嫌ーい! 同じ男でも瑠衣はそんなことないのにさ」
「僕は参考にならないかも」
これは亜衣にも秘密にしてるけど、そもそも僕の恋愛対象は女の子ではないのだ。
「瑠衣の学校の男子も晃みたいな感じ?」
「ど、どうかなぁ」
うちは進学校だから堂々と猥談をするような猛者はいない。というか、男友達とそんな話したことがない。みんな実は陰でそういった話をしているのだろうか。
「参考までに聞いてきてよ」
「はぁ!?」
「アタシの友達じゃ参考にならないもん」
男子高校生の意見を集めれば平均値が求められるのでは、と思う気持ちは分かる。亜衣のために一肌脱いであげたいけど、どうしたものか。