その日桜木は、早退してしまった。……私が悪い。私があんなこと言ったから。
 だからちゃんと謝りたい。 ごめんって、もう一度、謝りたい……。

 そう思った時には、すでに私の足はある方向へと向いていたーーー。


✱ ✱ ✱


 恐る恐る玄関のインターホンを押してみる。

 すると玄関が空いた。 そして現れたのは……。

「え……真琴?」

 玄関から現れたのは、桜木だった。

「……なんで、何も言わずに帰るのよ」

「いや……どうしてここが?」

 そう聞かれた私は「……先生に、教えてもらった」と答えた。

「そっか。……まあ、上がれよ」

 桜木は私が来たことに驚きながらも、家に入れてくれた。
 私も桜木に会うためにここまでするなんて、バカだなと思ったけど。

「……お邪魔、します」

 恐る恐る中に入ると、そこは光をシャットアウトするためにカーテンが閉ざされていた。
 やけに暗いのは、それのせいなのかもしれない。

「オレンジジュース、飲むか?」

「え? あ、ありがとう」

「その辺、適当に座ってろよ」

「うん……ありがとう」

 初めて来た桜木の、部屋に。 部屋だけ見たら、ヴァンパイアの部屋とは思えない。
 すごくシンプルな部屋だ。余計なものとかはない。
 桜木は「ほら」とオレンジジュースの入ったコップを置いてくれる。

「……ありがとう」

 桜木は私の隣に座ると「で、突然どうした?」と聞いてくる。

「さっきのこと……謝りたくて」

「さっき?……ああ、あれは俺も悪いし。気にすんなよ」