この間の騒動の後から、萌恵は学校に来なくなった。
連絡もしてみたけど、返信は一切来なかった。先生に聞いたら、かなり落ち込んでいて、部屋にひきこもってるらしい。
そりゃあそうだよね……。大事な人が吸血鬼に殺されて、ショックを隠せる訳が……ない。
私だってきっと、そうだったかもしれない。同じになる、きっと……。
だからしばらく、そっとしておくことにした。きっと大丈夫だって、桜木も言っていたし。
「ねえ、桜木……?」
「……なんだ?」
私は屋上で桜木の手を握る。
「……私もいつか、吸血鬼になって死ぬの?」
私がそう聞いたら、桜木の目の色が変わった。 下を向いて俯いたまま、何も言わなかった。
「……教えて。 私……死ぬの?」
「分からない。……死ぬかもしれないし、死なないかもしれないし」
桜木が吸血鬼じゃなかったら、私はこんなに悩むこともなかったのかな……。
「……桜木、一つお願いがあるの」
「お願い……?」
「もし……もし私が吸血鬼になって、桜木のことを殺そうとしたら……遠慮なく私のこと殺してね」
私がそう言ったら、桜木は声を荒げ「バカ……! 何言ってんだよ!」と言ってきた。
「私……桜木になら殺されてもいいよ」
桜木のことをジッと見つめる。
「バカ! 簡単にそんなこと言うんじゃねえよ!」
珍しく、桜木が声を荒げた。
「……ごめん」
「いや、俺こそごめん……。感情的になりすぎた」
そう言って桜木は、屋上を出ていってしまった。
その後ろ姿は、どこか悲しそうで、泣いている子犬みたいだった。



