「桜木……遅いよ……」

 私、待ちくたびれたよ……。ずっと待ってたんだからね……。

「真琴!大丈夫かっ!? ケガしてないか!?」

 桜木は私の元へと駆け寄ってくる。

「さ、桜木……。遅いよ……バカッ!」

「済まなかった、来るのが遅くなって。 待たせたな」

「本当だよ、バカ……」

 私は桜木に抱き着いた。 久しぶりの桜木の温もりを感じて、恐怖が少しだけ和らいだ気がした。

「……アイツか、もう一人の吸血鬼の正体は」

「桜木……。あの吸血鬼、は……」

 私がそう口にすると、桜木は私の手を握り「大丈夫だ、心配するな。 俺がなんとかする」と言ってくれた。

「ちがっ……。そうじゃ、ないの……」

 震える私の体を抑え、桜木は「そうじゃない?……真琴、それはどういう意味だ?」と聞いてくる。

「じ、仁君は……も、萌恵の……」

「萌恵? 真琴の友達か?」 

「あのヴァンパイアは……萌恵の、彼氏……なの」
 
 私がそう話すと、桜木は「……なんだって? それは本当か?」か私を見る。

「う、うん」

 それを聞いた桜木は「クッソ……。何がどうなってんだよ!」と焦っていた。

「桜木、どうしよう……」

 萌恵にこのこと、なんて伝えばいいの? 事実を話すべき?

「いいか、よく聞けよ真琴。 このことは絶対に萌恵には言うな。……萌恵が絶対に混乱する」

「……わかった」

「お前は危ないから、離れた場所に避難してろ。隠れるんだ。 わかったな?」

「……うん」

「必ず、お前を守る」
 
 桜木はそう言うと、一人吸血鬼の元へと走っていった。 私は桜木に言われた通り、隠れられそうな場所を探しに走った。
 必ず、桜木が助けに来てくれると信じてーーー。