「え……。なんで……?」
なんで仁君が? どうして仁君が……吸血鬼になってるの?
訳がわからない……。これは一体どういうことなの……?
私はこの場から足がすくんで動けなくなった。そこに呆然と、身を潜めて立ちすくむしかなかった。
そして目の前にいる仁君は……もう、仁君じゃなかった。
人間の姿をした、ヴァンパイアになっていた。
いや、もう人間じゃなくなっていたーーー。
私は怖さと恐怖とで足がガクガク震えてしまい、動けなくなっていた。
状況を理解するのに、時間がかかった。
なんで……なんで? 頭の中にははてながたくさんあって、言葉すら出せなくなった。
「あ、萌恵……」
萌恵は、このことを知っているのだろうか……。
いや、これは絶対に知られてはいけない。
萌恵にだけは……知られてはいけないことだ。 萌恵がこのことを知ったら、混乱してしまう。
「桜木、何してるの……早く来てよ」
桜木、アンタどこで何してるの? 今何やってるの?
早く助けに来てよ……。桜木……!!
「さく……らぎ。 桜木ーーーーっ!!!」
私は精一杯の大声を振り絞って、桜木を呼んだ。
何度もその名前を呼び続けた。
「お願い、桜木。 早く来てっ……」
私を助けてよ、桜木。 守るって言ったでしょ!?
私を助けるって言ったでしょ……!!
肝心な時に来ないなんて……。私は目の前の恐怖で震えが止まらなかった。
するとその時ーーー。
「やめろっ……!!!!」
聞き覚えのある、声が聞こえた。 そしてその声は、私の大好きで愛おしい桜木の声だったーーー。



