「ほら、大体バンパイアって満月の夜に現れるんでしょ?」

 桜木にそう聞くと、桜木は「……まあたしかに、前まではそうだったけど」と答える。

「なに? てことは今は、違うの?」

「お前の言うこともあながち間違っちゃいない。……だが今は、満月の夜じゃなくてもヴァンパイアにはなれる」

「えっ、そうなの……?」

吸血鬼は満月の夜に現れるものだと思ってたんだけど、満月の夜でなくても現れることが出来るの?

「ああ。満月じゃなくても、月さえ出てれば簡単にな」

「……そう。なら今晩見せてくれない?」

 桜木の吸血鬼の姿を見れば、確実に信用出来るはず。

「見せるって、なにをだよ?」

「アンタの"吸血鬼゙としての姿よ」

「……おいおい、冗談だろ。正気かお前?」

 桜木は私の言葉に驚いている。

「私はいたって普通よ。 でもアンタが吸血鬼なら、どんな姿なのか気になるし」

「ふざけんな、そんな理由かよ」

 そりゃ気になるに決まってる。 人間じゃないんだから。

「なによ。イケない? だってアンタが吸血鬼だって知ってるのは、私だけなんだから。それにアンタが吸血鬼ならどんな姿をしてるのか、気になるに決まってるじゃない」

「……そんなに知りたいか?」

「うん、知りたい。だから私にだけ見せてほしいの、アンタの"本当の姿"を」

 桜木の秘密を知ってしまった今、もう後戻りは出来ない。

「……わかった。そこまで言うなら教えてやる。……ただし一つだけ条件がある」