「肩に虫、付いてる」

「えっ?……えっ!? ウソっ!」

 私はその言葉にビックリして、思わず自分の肩を見る。

「やだやだっ!」

 なのに桜木は「ウソだよ。虫なんて付いてないから」とおかしそうに笑った。

「え……騙したの?」

「悪い悪い」

「ねえ、ひどいんだけどっ……!」

 私が桜木の体を叩こうとした瞬間、桜木が私のその腕をバシッと掴んだ。

「え、なに?……は、離して」

 桜木から目を逸らそうとするけど、その瞳に捕まえれてしまい、逸らせなくなる。

「離さないって言ったら?」

「……じょ、冗談はやめて」

 そんなに真剣な目で見つめられ、私の胸の鼓動が最高潮に達していく。
 もうその目から、離れられない……。

「真琴……」

「さく、らぎ……?」

 その瞬間、桜木は私の体を引き寄せる。 

「んっ……っ」

 気づいたら私は、桜木にキスされていた。 桜木に握られたその手が熱くて、ヤケドしそうになりそうになる。

「……っ、な、なにするのよっ」

 なんでまた、キスなんて……。そう思うのに、私は桜木とのキスを拒むことも出来なかった。

「真琴、俺はお前が好きだ」

「え……?」

 桜木から告白されたとすぐにわかった。

「……それも、冗談?」

 私がそう聞き返すと、桜木は「冗談なんかじゃない。 俺は、お前のことが好きだ」と言ってくれた。
 桜木のその目が本気だと物語っていた。 私を見つめるその目が、本気だって訴えていた。

「……俺は真琴に、ずっと友達以上の気持ちだった」