桜木は私の食べかけのサンドイッチに、横からかぶりついたのだった。
「……うん、美味いな」
「ちょっ……ちょっとっ!」
え、何今の……? 今のは何?!
「か、勝手に食べないでよ……!」
「いいだろ、一口くらい」
と言われたけど「よ、よくない! 私のだから」と食べかけのサンドイッチを口に詰め込む。
「もう……」
なんかわからないけど、胸がザワザワする。
「じゃあ代わりに、俺のおにぎりも一口やるよ」
と言われたけど「い、いらないっ」とそっぽを向いてみる。
「さっきの、間接キスじゃん……」
思わずふと呟くと、桜木は「え?」と私を見る。
「あ、いや……何でもない」
しまった……心の声が漏れてしまった。
「……真琴、お前今日どうした?」
桜木は私にそう聞いてくるから、私は「別に、何でもないから」と答えた。
「なあ、お前今日変だぞ?」
桜木から顔を覗き込まれてた私は、思わず立ち上がってしまった。
「なんだよ、そんなに驚くことないだろ」
「だって……急に覗き込んで、くるから……」
私は桜木のことを変に意識しすぎて、やっぱりおかしくなってる……。
顔を覗き込まれた時、桜木の顔が目の前にあってドキッとした。
桜木は立ち上がると「なあ、真琴」と私の名前を呼ぶ。
「えっ……。な、なに……?」
名前を呼ばれた瞬間に、私の鼓動が早くなるのを感じて、胸がドキッとする。
お願いだから、この胸の鼓動が桜木に聞こえないようにと、願ってしまう。



